第10話知らない程都合が、よい

「泣くくらいなら、やめちゃえば?」

「そんなの言ったって、無理がある」

あの人を惚れている人は、きっと、あの人の後ろ姿を見ている。

見ているようで、は。

「見なくて、良くないか?」

「なんで?」

白砂糖のように消えていく。

彼女の思いなど

露知らずに

この人は、きっと

俺を越えては、くれない。

笑いかけては、くれるが

見つめてくれない

好きな程

見てくれない

「だから、そう言うのだろう?多分」

「そうなの?」

見るのを寄せと、言われた。

わかったと言った。

夕立など、知らない。

漸くして、この人は、笑って言った。

「拾って捨てろ、合ったら捨てるな」

この人の太陽の笑みは、余程の事が好きなのねないと無理がある。

この人は、空高く舞うのだろう。

俺を残してではなくて。

俺を置いて行かないで。

好きにさせるのだろう。

苦しめないのだろう。

惚れさせないのだろう。

この人は、きっと…。

「ごめん、それは、無理がある」

「そっか、分かった」

この人は、きっと。

見ていた。

俺の事ではなくて。

その人を。

きちんと。

嫌、確実に。

この人は、きっと。

沸騰してしまう、感情を押さえて、この人は

空高く言ってしまう。

この道に、進みたいと。

願うのだろう。

「しょうがないから、やめてよ」

「分からない」

惚れているよりは

知っていた。

知らさせられていた。

愛していた。

好きだった。

無理だった。

言葉が、飛んでいく。

誰かに取られては。

消えていく。

その人は、知っているのだろうか?

その人の事を

「ごめんな…」

「嫌…ううん…」

この人は、言った

『好きなものを好きなだけ手に入れろ』と

この人は、きっと。

泣かないのだろうか。

夕立なんて、忘れてやろう。

好きにさせるのだろう。

ならないであろう。

惚れないで、あろう。

この人の事を

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