第3話 ポンコツ魔王

「っ!?」


大輔は咄嗟の判断で銃身を掴み横へ向ける。

銃は近距離ではナイフよりも弱いと言われていたりする。ましてや猟銃のような銃全長の長いものであるとより取り回しが悪くなる。


(危なかった…。)


話に夢中になっていて周りが見えていなかったようだ。もう少し反応が遅れていたら死んでいただろう。


(それよりもなんで…。)


突然銃を向けてきたのはもちろんだが何故かボニータは怯えていた。人殺しを見るような目で震えながら大輔を見ている。


「えっと…。」


「出ていって!」


とりあえず声をかけようとするがそれはボニータの叫び声によってかき消される。


「ど、どうしたんですか?」


訳がわからない。


「いいから早く出てって!人を呼ぶわよ?」


ここにいてはいけないと感じた大輔はゆっくりと後ずさりしながら部屋を出て、出口を探した。

外に出るとそこには市街地が広がっていた。

とにかくこの家から離れなければそう思って初めて見る景色の中を無我夢中に走り抜けた。



「ハァハァ…。」

人気のない森に来て足を止める。


(さっきからなんなんだ…。)


ここに来るまでにもたくさんの人が自分のことを避けたり、怖がったりする。

目の前にあった切り株に腰をかけ、状況を整理する。


(ボニータが怯えていたのは話をしてからだったんだよなぁ…。それまでは優しくしてくれていたはず…。)


(もしかして…。)


一つ思い当たることがあった。

それは、自分は魔王によって魔族の危機を救うためにきたことである。もしボニータが神族側の人間だったとすればそれは敵でしかない。


(だとするとあのポンコツ魔王め…。最初からお前の城に転送しろよ!もう少し死ぬとこだったんだぞ!)


心の中でキレる。

でもそれだとここに来るまでの人々の反応の説明がつかない。


(そういえば無理矢理連れて来られたのになんか協力する感じになってきてるな…。)


なぜか悔しい。ただ元の世界に帰るのは嫌だ。かといって死ぬのも…。

既に辺りは暗くなってきている。


(とにかくヴェスネス城だっけ…あいつの城に行かなきゃ。でもどうやって……ん?)


森の奥に綺麗な月を映し出した湖がある。

その近くに大輔があれほど望んでいた、異世界らしい生き物が、森の妖精『ゴブリン』がいた。



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