トロピカルプール

南国に生きたい

彼女が言った

夏の終わりごろ

校庭に咲いている下向きの向日葵を

ハサミで切り取った

夜学校に忍び込んで

プールに向日葵と浮輪をばら撒いた

それから

制服を着たまま浮き輪に体を預けて

月を見ていた

遠くで花火の音がした

南国ではなかった世界

安っぽい壊れかけのリゾートプールみたいな世界で

生きている

僕はプールに飛び込んで

彼女が目が覚めたみたいな顔をして僕を見ている

僕達はセミのように

短い存在だと思っていた

南国に行けば幸せ?

彼女は笑って聞くから

南国にも冬は等しく来るよ

冬が来ない場所に行こう

まだ花火の音はやまないのだろうか

寂しいから

ずっと空で叫んでいてほしい

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