蛮勇ジェネレーションズ
懲罰部隊ブラッディクロス対キュアセイダー&ジャスティス&キャプテン・コージ
第1話 姫君の脱走
-Kakuyomu Hero Wars-
-1st Anniversary-
「あの女が……逃げた?」
雷雨が轟く暗夜の景色を、窓辺から眺めながら――ある1人の男が、そう呟く。彼の後ろに立つ、眼鏡をかけた細身の男は、神妙な貌で深く頷いていた。
「戦い方も知らない一般人の女の子……とはいえ、やはりニュータントね。自力で鎖を噛みちぎった跡があったわ。今、
「そうか。あいつの飛行能力なら確かに容易く見つかるだろうが……あの図体だ、厄介なヒーロー共に見つかる可能性も高い。ある程度行き先を絞れたら、帰投して俺に報せるよう伝えろ」
「えぇ、わかったわ」
男でありながら女のような言葉遣いで話す細身の男は、窓辺に立つ男の指示に従い、この部屋から立ち去っていく。
「……この洋館も、随分広くなったな」
その背中を見送った男は――靡く髪を赤く染め上げ、暗澹とした空を見据えていた。
「……気の毒だが、
やがて黒いレザージャケットを翻した彼は――ヒトのものではない眼の色に変わる。
◇
丘の上に建てられた、人気のない妖しい洋館。そこから見下ろした先にある山道を、1人の女性が駆け続けていた。
ボブカットの黒髪を振り乱し、薄汚れた貫頭衣という現代人らしからぬ姿で、裸足のまま砂利道を走る彼女は――何度もよろけながら、懸命に足を動かしている。
彼女が血を踏みしめるたび、ボロ布で辛うじて隠されている白い巨乳が、激しく上下に揺れ動いていた。
「死ねない……死にたく、ないっ……あたし、まだ、まだっ……!」
疲労から来る目眩で、前方の視界すら曖昧になる中で……彼女は「追手」から身を隠すべく、森の中へと飛び込んでいく。葉や小石、枝にその柔肌を傷つけられながら、その痛みにも構わずに。
「助けて……! お願い、誰か……誰かぁっ……!」
息を荒げ、涙なのか雨なのかわからないほどに濡れながら。傷付きながら。彼女は絞り出すような声を漏らし、這うように歩く。
だが、その慟哭は誰にも届かず……彼女は意識を失うその瞬間まで、己の足で進み続けることを強いられていた。
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