アエテルタニス・サーガ

角口総研

0. 勇者排斥運動

 アルタリア南部クロメリア

 ここは作物は育たずこれと言った資源もない不毛な土地である。それに国と呼べるほど大きな組織力もない。唯一の他所に勝るのは何度か勇者を輩出してきたことぐらいだ。伝承ではその殆どが碌な末路を辿らなかった。

 そんな勇者を数多く世に出してきたクロメリアであるが近年、同時多発的にある一大運動が盛んに行われている。

「勇者は不要である! 神々の負の遺産であり前時代の盲腸だ。考えても見給え、彼らは何ら益には成らない」

 声高にこう宣言するのはマーディアス、クロメリア漁業会の代表だ。

 元来クロメリアは荒くれ者が多い土地柄であり、それ故に自警意識も高い。己の問題は手前で解決するという孤立主義思考なのだ。

 そのためか屈強な肉体に芯の強い心を持ち合わせている者が多のも事実である。神々はどういった基準で人の子に選定の剣を託すのかは知る由もないが、こういった長旅にも耐えうる民族としての気質が「畑から勇者が採れる土地」の所以かもしれない。

 聴衆の中に一人、遠目からマーディアスの演説を鑑定するかのように眺める一人の女がいた。

「随分と人望の厚い男だ。反骨の人士……これはまだ試したことは無かったかな」

 今日と言う日を特異点としてマーディアスの運命はクロメリア、そして魔王をも巻き込んで鼓動をはじめる。

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