花火を向けないで! 確かその辺に俺がいる…

かとも

花火を向けないで!確かその辺に、俺がいる…

 15年ほど前、雑貨卸の会社に勤めていた私は、『ピエリモ』という装置と出会いました。


 プリクラのようなボックスに、28台のカメラが仕組まれていて、ほんの数分で人物像の3Dデータ作成ができるサンヨーという会社が開発したシステム。

そのデータを元に、銅像を作ったり、クリスタルガラスの中にレーザーで像を立体に描いたりでき、当時、島田紳助さんの等身大の銅像を作ったりしてTVでも何回か放映された事がありました。

   

 この、『ピエリモ』を使って、プリクラのノリで大阪梅田の雑貨店で身長10cm、5000円の彫像人形、クリスタルへのレーザー立体彫画を主力に販売してみては!という事に。

   

 約1ヶ月、その雑貨店に設置してもらいましたが、自分の像を作りたいと考えるお客様は圧倒的に男性で、女性が主なターゲットのその店にはそぐわなかったようです。


 どんなに化粧を施した顔でも、ピエリモで3Dにデータ化されるのは素顔。 

剃った眉毛もそのまま。顔の輪郭だけが正確に映し出されます。

そんなところが、プリクラ大好きなはずの女性達に敬遠された理由かもしれません。


 また、当時は3Dプリンターなどという代物はなく、その場で合成樹脂に像を彫る装置はあまりにも音が大きく、また、専門の技術者が必要なので常設もできず、お客様の手元に届くまでに約10日間も日にちを要したのも致命的だったようです。

  

  大した売上は得られませんでした。

  

 サンヨーの開発スタッフの方達は、システムそのものの販売のための販促と捉えておられたと思いますが、かなりの手間をかけさせてしましまいました。 申し訳ない話です。

  

 その後サンヨーさんが調子悪くなって、会社が無くなってしまったのにも、ほんの少しだけ責任を感じています。

   

  当時サンプルで作ってもらった10cmくらいの我が像は、家の中にあると気持ち悪いと妻に言われ、我が家の庭でリスの置物等と一緒に並べてます。


 昨夜、庭で花火をして、娘が置物の方向に火花を飛ばすので思いだしました。


「確かその辺に、俺がいる…」


  泥がこびりついてしまっていたので、15年ぶりに洗ってあげました。

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花火を向けないで! 確かその辺に俺がいる… かとも @katomomomo

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