苟も八雲の道を行く我ぞ万葉の書を枕に敷かむ

 いやしく八雲やくもみちわれ万葉まによふみまくらかむ


〔語釈〕

いやしくも」は仮にも。かりそめにも。

「八雲の道」は和歌の道。歌道。

万葉まによふみ」は万葉集。私の記憶だと、賀茂真淵が氏の歌の中で「万葉」と書いて「まによ」と読ませていた。検索したがそのような記述は見当たらず、私の記憶違いの可能性もある。

「枕に敷かむ」は、枕(の下)に敷こう。


〔大意〕かりそめにも和歌の道を行く私である。万葉集を枕の下に敷いて寝よう。


 七福神の絵を枕の下に敷いて寝ると金運に恵まれるとかいうげんかつぎがあって、それ以外にも枕の下になにがしかを敷いて寝るげんかつぎの風習があっただろうと思う。それにならって万葉集を枕の下に敷いて寝ようというわけだ。数ある和歌関係の文書の中で特に万葉集としたのは、それが大部で現存最古の歌集だからというような理由ではなく、私がその歌風にあこがれているからだ。といっても、私が良いと思ったのは全約4500首の100首に満たない程度、おおよそ百か五十に一つくらいだろうか。私の場合、良いと思うのは名のある歌人、わけても額田大王ぬかだのおおきみ高橋虫麻呂たかはしのむしまろ山上憶良やまのうえのおくらのそれに集中していたように思う。

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