アストロノミカルス
500
第1話 welcome to 天文部!
図書室には顔の良い
動きに音がなく、声をかけなければ大体静かに本を読んでいる。目にかかりそうな長さの黒い前髪が軽そうに揺れる度に潤った瞳がわずらわしそうに細くなる。この顔が好きで週に一度ほど図書室に通うが、彼は当番日が定まっていないのか、いたりいなかったりする。
しかしいるときは、他の当番者と違ってわざわざ椅子から立ち上がり、本を受け取ってくれる。心なしか返却として差し出したライトノベルを見て笑っている気さえする。
平戸はクラスメートでもある。廊下から2列めの一番前の席ということでよく授業で当てられている。
教室で見る彼は図書室にいる時より冷たい人間で、たまに好奇心で女子が彼の名前を呼ぶが、その声には返却日を告げる声よりも抑揚がない。
第1話 welcome to 天文部!
クラスメートとの良好な関係を築き損ねた
だから、ホームルームが終わると足早に出口に向かったのに担任に呼び止められてしまった。この
「軒先。まだ入部届が提出されていないんだが」
「すいません。まだ決まってないです」
それは私の背中にちゃんとしまって背負っているからな、と思いながらまず一番に謝った。
このやり取りも二度めなので、宇佐美も困ったようすはなく、出席簿に挟んでおいたプリントを一枚滑らかな動作で軒先の前に出した。受け取らないと宇佐美の手とプリントが他に行き場もないようなので控えめな摩擦を起こしてプリントをその指から抜き取った。
プリントには部活の名前が連なっていた。
「お前におすすめなのはゲーム研究部。これは帰宅部だ。だが、部活はちゃんと出たい、というなら」
アストロノミカルス 500 @gomazou8
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