第一章 再び始める学園生活
プロローグ 『始まりの最期』
「______どうして。」
目覚めた自分の周辺は、建物どころか生命の存在すらを感じさせなかった。ただ、その地を吹き抜ける冷たい風だけは感じることができた。
地平線の彼方から足下まで黒くなっている地を見る。今の状況が把握できず脳内の処理が全く追いつかない。
「本当に、誰もいないのか。」
一人は淋しい。自分は、誰かを求めるように歩きだした。
空は紅く、雲一つなかった。自分は、「早くこの孤独から解放されたい」そのことだけを考えて一心不乱に歩き続けた。この永遠に覚めることのない悪夢のような地を。
____________________
「うわぁ〜、これはこれで物凄く美しい景色だね。」
自分の背後からこの世のものとは、思えない美声が聞こえた。その声で孤独感がなくなる。自分は、やっとの想いで、孤独から解き放たれ______
「えっ。」
情けない声が出てしまう。自分は、目に入ってきた光景に驚いてしまったのだ、高貴な服を着ている、人間を超越した美貌を持つ者に。
なにより、特徴的なのは______
「翼が、生えている。」
自分は人間でない存在と対峙していると理解した。
「天使ちゃんを見るのは、初めてなのかなぁ。でも、 君は何回も僕と会っていて、お話までした仲だと思うんだけどねぇ。」
彼は、そう言い放った。彼を彼と呼ぶのは彼が、一人称を僕と言ったからだ。見た目はどう見ても女に見えるが。そんな彼は自分と何回も会っていると言い、話しまでしていると言ったのだ。そのような記憶は、一切ないのだが。
「あれぇ、今回は君とは会ってなかった感じぃ。これは、シッパイ、シッパイ。まぁ、次回、僕と向き合ってくれたらいいや。次の君に期待しちゃうなぁ。」
さっきから彼が述べていることが全く理解できない。どうしてだろうか。恐らく、時制がおかしい気がする。
「よし、今回は失敗に終わったけど、次回は頑張ろうねぇ。君の力は次の君へと継承される。僕と向き合って答えを導き出して。このことを君の心に刻み込んでほしい。きっと、君が見てるから。頼んだよぉ。なんせ、君だけが頼りなんだから。」
自分が頼りだと言われた。一体それは何に対しての頼りなのか。しかし、ここが荒廃してしまったことに関係があるのだろう。
気づけば、太陽が傾きだしていた。夜が来る。
「うッ、」
途端、足が大きく崩れた。力が入らない。急なことに反射的に腕が反応する。
バタンッ
腕をついたものの、腕はそれを支えることが叶わず崩れる。顔面強打をくらう。
「うぷッ」
口から何か液体が出た。口の中が鉄の味で広がる。血を吐いたのだ。これはヤバイ、自分はここで。
「あ〜ぁ、もう限界みたいだねぇ。太陽が沈みきると、君は死ぬ。んっ、違うか。正しく言うと、死ぬんじゃなくてやり直すんだった。これは、その為の代償のようなもの。だから、こんな思いしたくなかったら、この世界を救ってねぇ。あと、ねぇ〜。彼じょ___の_と___んだ___ど____」
最後の方が聞き取れなかった。彼は自分に何を伝えたかったのか。
最期、目の前が紅で覆われた。目から鮮やかな血が溢れてきたのだ。
『おやすみ_』
誰かが心の中に直接話してくる。そこで、自分の命が途絶えたのがわかってしまった。短い一生だとそう思った。死の世界はとても暗かった________________________________________________________が、目の前が光に包まれた。さっきまでとは、全く異なった世界へとなったのだ。
『_おめでとうございます。お母さん、元気な男の子ですよ_』
そして、生まれたのだ。自分いや、俺、千代田ハルトは____
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