第96話

”forest story”(指輪物語5)


あまりの事に驚いていた私達夫婦に三俣が「窓の修理と片付けはやっておきますから師匠の餡子さんの所へ行き事の次第を伝えこの後、どうしたら良いかを聞いて来て下さい!」

私は三俣の言葉に頷き高雄さんを連れて大通りでタクシーを捕まえて餡子さんの仕事場へ急いだ。


慌しくタクシーを降りて餡子さんの仕事場のドアを開けた私達夫婦を見て餡子さん。

「おや?いらっしゃい新婚さん姉さんに頼まれた物は出来たのかい?」

餡子を作り出す魔道具のサクマ君から白玉善哉用の餡子を出しながらノホホンとしている餡子さんへ私は声を荒げた。

「黒蜜おばばが、最悪の指輪と神殺しの魔香水をを盗んでうちの窓を突き破って飛んで行きました!!黒蜜おばばは神殺しの毒でおかしくなってしまったんです!口をVの字にして笑って」

私の言葉を聞いた餡子さんも先程の黒蜜おばばと同じ様に口をVの字にして笑い「そうかい、そうかい姉さんがあの二つを奪って窓を突き破り箒て飛んで行ったのかい。それは良かった良い物を作ってくれたねぇ〜薫子や。ヒイッヒヒヒッヒィ〜最高だよ最高!姉さんはありったけのブースター魔道具を箒に付けて防御魔法を張りながら今頃マッハ5は超えたスピードで中東の砂漠地帯に向かっている所だろうねぇ。そしてきっとこの後砂漠で核弾頭並の爆発が起きるよ。楽しみだね〜ヒイッヒヒヒッヒィ!!」


お腹を抱えて笑っている餡子さんを見て私は狂った魔女姉妹に騙され大変な物を作らされてしまったのでは無いか?世界の破滅に手を貸してしまったのでは無いか?


そんな私の考えをぶち破る様に居候しているバーバ・ヤーガがタブレットの様な物を持って入って来た。

「ヒイッヒヒヒッヒィ!やったよ!やった!砂漠にキノコ雲が上がったよ!これで世界は救われるよ!」


世界が救われる?一体何を言っているんだろうバーバ・ヤーガは?


「ふぅ〜完成したんだね姉さん・・・これで蜜ちゃんを正気に戻せる」

餡子さんはバーバ・ヤーガと手を取り合い喜んでる。

「餡子さん一体何を言っているですか?」

すると不思議そうな顔をして私を見ている餡子さん。

「ん?鎮魂の指輪と復活の魔香水が完成したからロケット砲で亡くなった親子を魔香水で生き返らせて

指輪を使って蜜を正気に戻して一件落着だよ」

「い、いえそうじゃ無くて砂漠で核弾頭並の爆発は?黒蜜おばばは狂ってしまったのでは?」

バーバ・ヤーガと顔を見合わせ「プッププッ」と笑う餡子さん。

「薫子や、お前さん達夫婦は自分の作った物がどんなに危ない物か解って無かったのかい?あの魔香水に指輪をドボンと入れると核爆発並みの魔法反応が起きるんだよ。だから誰も鎮魂の指輪と復活の魔香水を作らなかったのさ。それも完璧な最悪の指輪と神殺しの魔香水で無ければもっと広範囲を吹き飛ばす魔法反応を起こしていただろうねぇ。あんたら夫婦が作ったのは魔女が思う究極の「やって見たいけれどもとてもじゃないけど試せない実験」なんだよ。だから姉さんやバーバ・ヤーガに私が口をVの字?にして喜んでたのさ。世紀の魔法に関われると。姉さんが指輪と魔香水を持って箒で飛び出したのはねあの二つが出来て六時間以内に反応させなければ成らなかったからなんだよ。中東の砂漠地帯なら爆発させても被害は無いし蜜の居る場所にも近いしね。だから急いでいたんだよ姉さんは」


私と高雄さんはその場にヘナヘナとへたり込んだ。


「そ、そんなに危ない物だったんだ。良かった薫子さんあの場でドボンとやらなくて・・・」

「高雄さん・・・二人してチリになる所だったわね。良かったわ」


暫くすると通信魔鏡で黒蜜おばばから連絡が入った。


「一件落着」と


世界は救われた。


正気を取り戻した蜜ちゃんはニコニコ笑顔で地獄や天界、月や世界中を巡って皆んなに美味しい物を今日も元気に届けている。


☆☆☆☆☆


「三俣、このどら焼きはどうしたの?」

「あー、それは薫子さんと旦那さんがお二人で経堂の商店街に散歩に行っていた時に蜜が持って来てくれたんですよ。この頃蜜のお気に入りだとかで」


私と高雄さんはどら焼きを見ながら「「ハハハッ」」と乾いた笑いをあげた。

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