第94話
”forest story”(指輪物語3)
「た、高雄さん御昼ご飯は何にしましょうか?」
「薫子さんも高雄さんなんだから別の呼び名で・・・」
「そ、そうですよね高雄っ!いえ、雄大さん♡」
この二人、出会ってまだ24時間経ってません。
中々のバカップル振りです。
区役所から帰る道、お米屋さん親娘に散々冷やかされながら家に帰ってダイニングでの会話ですハイ。
私は薫子さんの使い魔で三俣です。
薫子さん、昨日から住み始めた高雄さんと今朝早くに出かけて帰って来たら「三俣!私今さっき、高雄さんと結婚して高雄薫子になったから宜しく!」と言われビックリしました。
お昼御飯を食べた後に薫子さんの家に新しく構えた仕事場で溜まっていた彫金の仕事を始めた高雄さん。
薫子さんと結婚出来た嬉しさから気合い入れて指輪に彫金をしていたら物凄い呪具が出来上がってしまった。
偶然出来たこの指輪、「新婚で幸せな人が嵌めると悪夢に魘され《うなされ》必ず離婚してしまう呪いの掛かった指輪」となっていた。
出来上がった指輪を鑑定魔道具で調べてビックリ。
新婚の自分にとっては不吉な指輪。
バーナーで炙り溶かして仕舞おうとした所、ガスの元栓の位置が分からず薫子さんか使い魔の三俣に聞こうと指輪をズボンのポケットに入れて薫子さんの仕事部屋へ。
コンコンとノックして『どうぞ〜〜』と言う暗めの返事を聞いてから中に入るとビーカーに入った不気味な紫色の液体を前に項垂れる薫子さんの姿が・・・。
「薫子さん一体どうしたんですか?そんな暗いかおをして?」
「今度結婚する方に頼まれていた『好きな人を幸せな気持ちにさせる魔香水』ですけど結婚した嬉しさから気合い入れて魔力を込め過ぎて作ったら『嫌いな人に永遠にに好かれる魔香水が出来てしまって・・・」
「うわーそれは嫌な魔香水ですねぇ。そうそう僕も先程、結婚した嬉しさから気合い入れて作った指輪も同じ様にっと!」
ポケットから呪われた指輪を取り出そうとしたらポケットの縁に手が引っかかって指輪が紫色の液体の入ったビーカーに「ヒューッポン!」と入ってしまった!!
ビーカーの中で白く輝き出した呪いの指輪。
数秒その状態が続くと不気味な紫色の液体がピンク色の液体に変わった。
恐る恐るビーカーの中を鑑定魔道具で調べて見ると『愛し合う二人に幸せをもたらす魔香水』に変化しピンセットで取り出した指輪を鑑定すると『新婚さんが嵌めると二人の結び付けを高め夢の中でも幸せになれる指輪」になっていた。
腕を組んで考える高雄さん。
「不吉な呪具が薫子さんの失敗魔香水に浸かってお互いに作用しあって呪いを祝いに昇華したのかも知れませんねぇ・・・」
「そんな事例は聞いた事無いですけど私達夫婦の愛の共同作業に依るものですね♡」
結構大変な事なんですけれどもお気楽な二人。
この後、この夫婦の奇跡の作品は魔女の世界に一大旋風を巻き起こす事になる。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
突然、箒に乗って現れた黒蜜おばばの言葉に私は驚いた。
「蜜ちゃんが狂った?」
黒蜜おばばから衝撃的な話を聞いた。
「蜜が昨日、中東の紛争地区とは大分離れた街にいる人の何処へどら焼きを届けに行ってね。その人が日本で食べたどら焼きが向こうのデーツ(棗椰子を干した物)に良く似てて気に入って蜜に頼んだそうなんだよ。それでね持って行ったどら焼きがその街で大人気になってね。自分は食べれたけどこの美味しいお菓子を自分のお母さんにもどうしても食べさせたいと小さな子供が蜜に自分のお小遣いを渡してどら焼きを頼んだんた。蜜は急いで日本に戻りどら焼きを買って急いでその子の元に戻ったらその子の家がアメリカが支援する反政府組織にロケット砲を撃ち込まれて吹き飛んでいて・・・ロケット砲が撃ち込まれた理由が『外国の贅沢なお菓子を頼んだから』だったんだよ・・・最初に蜜にどら焼きを頼んだ人の家もロケット砲を撃ち込まれたけどそちらは怪我人も無く済んだけれど」
黒蜜おばばは泣きながら話しを続けた。
「子供の家にどら焼きを持って来た蜜は崩れ落ちた家の残骸を掻き分けて瓦礫の中からお母さんと抱き合ったまま倒れている子供を見つけて泣き叫んで・・・その後、蜜は狂ってしまったんだよ。優しい蜜は耐えられなかったんだ。蜜は・・・」
中東の街で怒り狂った蜜ちゃんは吹き飛んだ子供の家にモンスターズの
「このまま怒り狂った蜜が正気に戻ら無ければ多分、世界は滅んでしまうだろう・・・月の重量ウサギが大量の隕石を世界中の軍事基地に落とす準備を始めたとかぐや姫から通信魔鏡で連絡があったし、天界も地上を焼き尽くすソドムの光を準備し始めたとの情報もあるんだ・・・それと世界各地の封印されている地獄へ通じる場所に鬼が現れ始めたとの報告も出て来ていてね。多分、蜜を悲しませた馬鹿な人間を滅ぼす為に地獄の軍団がやって来る準備を始めたんだろうね」
私は黒蜜おばはの言葉にゴクリと息を飲んだ・・・フト自分の手を見ると細かく震えている。
「それでね、蜜を正気に戻す為に貴方達夫婦に作って貰いたい物があるんだよ」
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