第53話

俺は粒餡の魔女の使い魔で勝俣と言う名前のプレイリードックだ。

黒田の魔女の使い魔の中で一番の古株なので何かあった時は俺が使い魔達の司令塔になって指揮を取る。


今回は家出した琥珀さんの娘。

瑪瑙ちゃんの捜索だ。


自分が酒を飲んで遊びに行く時に娘の瑪瑙ちゃんに成長促進魔法薬を飲ませ一緒に飲みに行こうと考えた琥珀さん。

自分では一度飲むと数時間で元の姿に戻る魔法薬をとお願いしたつもりだったが出来て来たのは成長したまま戻らない物だった。

黒蜜おばばにちゃんと説明をして無かったのがいけなかったのだが。


薬を飲み四歳から二十歳の姿に成長した瑪瑙ちゃん。

お婆様や叔母さん従姉妹と夜も遊べると喜んで飲みに行ったけれど翌朝、目覚めても成長した姿にびっくりして家を飛び出してしまったらしい。


朝起きると娘の姿が無い。

玄関が開いており大人用の靴が無い。

玄関に設置してある監視カメラの映像を見ると昨夜の大人のままの瑪瑙ちゃんが飛び出して行く映像が・・・。

母親の震電さんに連絡して娘が大人の姿のままの家を飛び出してしまったと伝えた。


そこで空を飛べる使い魔達が捜索に駆り出された訳だ。

俺たち使い魔は魔女の魔力を感じ取る事が出来る。

瑪瑙ちゃんの魔力がどんな波形かを黒田の使い魔達は覚えている。

今は携帯電話があり連絡し合う事が出来る。

しかしバラバラに連絡し合うと纏まらない、そこで俺が司令塔になって地図を埋めて行く事になったのだ。


さあ瑪瑙ちゃんの捜索開始だ。


まず木菟みみずくの小次郎に家の周囲を回らせ水玉に上野公園方面を飛べない蜜に上野駅周辺を回らせた。

寿甘さんの使い魔、烏の八咫やたは秋葉原方面に行って貰い俺は浅草方面に飛ぶ。


今の所目欲しい連絡は無い。


そう言えば瑪瑙ちゃんは浅草寺の仲見世にある揚げ饅頭が好きだったなと思い出した俺は仲見世通りへ向かった。

ビンゴ!揚げ饅頭屋の前で腕を組んで唸っている琥珀さんによく似た女性を発見!。

近づき魔力を確かめると瑪瑙ちゃんの波形だ。


背中のポーチに入っているスマホから

【瑪瑙ちゃん発見。浅草寺仲見世】ショートメールを使い魔達や黒田の人に一斉発信する。


唸っている瑪瑙ちゃんの肩にそっと降りる。

俺に気が付いた瑪瑙ちゃん。

「おっ!勝俣、良いところに来た。済まないがちょっと小銭を貸してくれ。家を出る時に手ブラで来てお金を持って無いんだ。揚げ饅頭を買うのと浅草寺の御賽銭と出来れば御神籤代も」

俺はやれやれと首を振ってからスマホの入ってるポーチのポケットから千円札を出して渡した。


揚げ饅頭を二個買い一個を俺に渡した瑪瑙ちゃん。

饅頭を食べながら浅草寺の線香の煙を頭に浴び饅頭を食べ終えた手を履いているジーンズで拭きお賽銭箱に百円を入れて何かを祈り。

御神籤の自販機にお金を入れて出て来たのが大吉で大喜び。


すると後ろから「瑪瑙!御免ね」

琥珀さんが駆け寄ってくる。

その後に使い魔達も。


琥珀さんや使い魔達を見た瑪瑙ちゃんはキョトンとして。

「使い魔が皆んなお揃いなんて珍しいどうしたの?」

「使い魔達に家出した瑪瑙を探して貰ってたのよ」

琥珀さん泣きそうな顔で言う。

「家出?私が?朝になったら元の姿に戻ってると思ったのに大人のままだったから。このまま元に戻りません様にって浅草寺にお願いをしょうと家を飛び出したんだ。仲見世で大好きな揚げ饅頭を買おうとしたらお金を持って無いのに気付いて、腕を組んで唸っていたら勝俣に出会って千円借りて・・・」

皆んなが呆れ顔なのをみた瑪瑙ちゃん琥珀さんの手を握り。

「そうだ!御神籤大吉だったんだよこれで子供に戻らないよね?きっと。私早く大人に成りたかったんだ。昨日は夜に大人になれて嬉しかったんだよ。昨夜は一人前の魔女になれたから」


上機嫌な瑪瑙ちゃんと琥珀さんと使い魔達が上野の家に帰ると旦那さんや震電さんに黒蜜おばばと餡子さんが待っていた。

居間で瑪瑙ちゃんの話しを聞くと。

普段、魔法が使えそうで今一歩のところで使えなくてもどかしかった。

昨夜、大人の身体になったら思う様に魔法が使えて嬉しくて仕方が無かったけれども明日の朝になったら元に戻るのが嫌だった。

しかし朝起きると大人のままのだったので元に戻りません様にとお願いするのに浅草寺に急いで行った。後は皆んなが見たままだと。


どんな魔法が使えるの?と震電さんが聞くと居間の裏庭に続く窓カーテンを開きニッコリ笑った。


そこには昨夜まで無かった森が出来ていた。

瑪瑙ちゃんは後に植物の成長を促す”緑の魔女”と呼ばれる様になる。


どうせ黒田の血を引く魔女になるのなら外見と実年齢が合わないのは当たり前なんだから瑪瑙ちゃんもこのままで良いのでは無いか?また魔女は一般の学校に入っても良いが魔女の能力が発現したら先輩魔女に弟子入りして学校に行かないのが普通なので先ずは見習い魔女が必ずやる魔道具を作りを教える餡子さんが預かると言う話に。


まだ肩に乗ったままだった勝俣に瑪瑙ちゃん。

「これからよろしく頼むぜ勝俣!」

嬉しそうに言う瑪瑙ちゃんに勝俣はやれやれと首を振るのだった。


しばらく後に瑪瑙ちゃんの使い魔を選ぶ際に勝俣の親族のプレイリードック”猪俣いのまた”が選ばれた。

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