第17話 服装備
タイチたちは今、イノシシ狩りをしていた。
「いいか、ミレナ。上手く罠の有るところに誘導してくれ。」
「はい、なんとしても逃がさない様にします。」
ミレナは、体のあちこちを動かして準備をしている。
どうしてこんな事をしているのか。それは昨日のクエストが原因だった。
昨日ヴェルにブレスレットを売った後、クエストを受けた。その依頼こそがグルノーというモンスターの討伐依頼だった。依頼ランクは最低のEランク。だからこそ、盗賊のアジトから持ってきた装備だけで充分だと判断したのだ。
......だが、結果は惨敗だった。理由は主にミレナの強さだ。彼女を見た途端、グルノーは全速力で逃げ出したのだ。
そこで、グルノーに鑑定魔法をかけた。
ーーーーーー
『グルノー』
危険度E
警戒心が強く、危険を感じると逃げ出す。草食系。繁殖力が強いため放置すると爆発的に増加する。他の魔物の餌となりやすいため定期的な駆除が必要。
ーーーーーー
このように、グルノーは警戒心が非常に強い。そしてイノシシのような姿をしており逃げる速度がとても早いのだ。だが普通の人なら逃げる前にトドメを刺せばいいだけだ。ところがミレナの場合は姿を見た途端に全力で逃げるのだから追いかけようとする気力すら湧かない。
そんなこんなで昨日は成果ゼロに終わったのだ。
「今回は、罠を合計10個の用意した。これのどれかに誘導できたら俺達の勝ちだ。」
「はい、それでは行ってきます。」
ミレナは、物凄い速さで走って行った。その速さは、視界に捕らえるのがやっとのレベルだった。
「あれ......もしかして全速力で追いかけたらミレナなら捕まえれたんじゃね?」
ミレナが辺りを走り回っている時に、タイチの探知能力にミレナと、その前を走っているグルノーがひっかかる。
「ミレナ!少し前にグルノーがいる!!右側にある罠に追い込んでくれ!!」
「はい!」
ミレナは右回りに大きく曲がり、グルノーの逃げる方向を誘導していく。グルノーは後ろの脅威から逃げるために逃げていく。そしてついにグルノーが落とし穴に引っかかった。
「よし!!落とし穴に落ちた!」
タイチは、グルノーが落ちた場所へと向かう。
そこでは、ミレナが既にグルノーにとどめを刺していた。
「どうだ!倒したか!?」
「もう死んでます。」
「よし、じゃあ後2体やろう。」
クエストの依頼内容はグルノー3体討伐が最低条件だった。
そして、ミレナが落とし穴へと誘導していく方法で無事その後2体討伐したのだった。グルノーの角と魔石を採取してタイチたちはギルドへと向かった。
☆☆☆
「はい、それではグルノーの討伐達成とさせて頂きます。魔石などは売却しますか?」
「いや、売らなくていい。」
魔石がこれから役に立つかもしれない。年のために持っておこう。
「そうですか。それでは報酬の話をさせていただきます。今回の依頼報酬が銀貨1枚、前回の報酬が売却したものを含めて金貨30枚と銀貨3枚です。」
その瞬間、辺りをにざわめきが生じた。
「おい、今金貨30枚って言ってなかったか?」
「あぁ、俺も聞いたぜ。あいつらか...一人は奴隷みたいだな......。」
「あいつら誰だよ?」
近くにいた人の関心がいっせいにこちら向いた。
「(まずいな......ここで悪目立ちをしたくない。)」
ここで、目をつけられたらこの先の生活がしにくくなる。
「やめないか!他の冒険者を詮索するのはルール違反だ!!」
その場にいた一人の冒険者が声を上げた。
「おい、あいつって......」
「あぁ...『魔狼の牙』のリーダー、ザキルだ。」
その途端当たりのざわめきが止み、その男......ザキルがこちらにやってきた。
「ありがとう。おかげで助かった。」
タイチはザキルに礼を言った。あのままでは他の冒険者に絡まれる可能性もあったのだ。
「いや、いいよ。冒険者同士助け合うのは当たり前さ。僕の名前はザキル。『魔狼の牙』というパーティーのリーダーをやっている。」
「そうか、俺の名前はタイチだ。こっちは俺の奴隷のミレナという。」
「そうか、まぁ縁があったら宜しくね。」
そう言って、ザキルは颯爽とギルドを後にした。
「......なんかいい奴だったな。」
「そうですね。あの人たちのリーダーだから警戒していましたが......」
そうして、タイチたちはギルドを出た。
☆☆☆
「さて、確か今日がミレナの服が完成する日だったな。行こう。」
「はい、ご主人様。」
そうして、前回の服屋を再び訪れた。
「いらっしゃい。あら、前の龍人の子ね。」
店の女の人が奥から服を持ってきた。
「出来てるわよ貴方達の服。こっち来て。」
そう言うと、ミレナを連れて奥の部屋へと去っていった。
「こんにちはお兄さん。それでは、お兄さんの服も出来ているので着替えてみて下さい。お姉ちゃんの自信作ですよ。」
さっきの人の弟が服を渡してくる。
着替えてみると、確かに自信作というのが嘘ではないことがわかる。動きやすさを追求した上で綺麗な黒色で全身を覆われていた。
「あぁ、結構いいできだ。」
タイチはあまり服に興味はないが、それでもかっこいいと思う。
そこに、店の女の人が現れた。
「うん、やっぱりあんたは黒が似合うよ。」
「はい、素敵です。ご主人様。」
そして、ミレナの声に反応してその姿を見る。
「可愛い......」
そこにいたミレナは今までの姿とは全く印象が変わっていた。
ミレナの服は、青を基調としたワンピースだった。ただ背中の部分が大きく空いていて、どちらかというとドレスのように見え気品さえ漂わせていた。
「どう、綺麗でしょう。特に背中側を作るのにはこだわったの。この子の白っぽい肌と青色のバランスを物凄く意識したわ。」
「あぁ、ありがとう。」
背中を大きく空けているのはきっと翼が出ても邪魔にならないようにだろう。
「それに実はこの服、魔力糸で作られてるの。魔力糸っていうのはここら辺にはあまり伝わっていない技術でね、糸に魔石が練り込んであるわ。だから魔力を通せば防具にもなるし、こう見えて体温調節の魔法がかかってるからどんな場所にもこれで対応できるわ。あぁ、あなたのにも付いてるから安心してね。」
この服が防具の役割を果たしてくれるのか......だとしたらすごいな。
「そうか、ありがとう。買おう。」
「毎度あり。合計で金貨3枚よ。」
「分かった。」
タイチは袋から金貨3枚を取り出して渡した。
「あぁそれと...貴方達は冒険者よね?だったらその服の防具としての機能はきっと役に立つわ。魔力を通すと、解除するまで物質的に硬くなるから役立ててね。」
こうして、タイチたちは服なのか防具なのかよく分からない代物を手に入れた。
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