第13話 冒険者ギルド
騒ぎから抜け出した後、タイチたちは冒険者ギルドの前にいた。冒険者ギルドには、兜をかぶった兵士の看板が掲げられている。
「行こうか、ミレナ。」
「はい。」
そして、タイチたちは冒険者ギルドの扉を開けるのだった。
そこは、酒場と役所が合わさった様な場所だった。奥の方の受付で手続きをしている人がいれば、テーブルに座り酒を飲んでいる者もいる。
タイチたちは、奥の受付の方へと進んで行く。
「はい、ご用件は何でしょう?」
受付嬢の人がそう言った。
「この子と俺の2人冒険者ギルドに入りたいと思ってるんだが......」
「なるほど、冒険者申請ですね。分かりました。では冒険者についてどれくらい知っていますか?」
受付嬢の人は、紙を準備し始めた。
「冒険者について?そんなの、魔物を倒す人の事じゃ無いのか?」
「違います。冒険者は基本的に何でも屋だと考えてください。もちろん魔物を討伐するのも冒険者の仕事です。ですが他にも薬草の収集、護衛の依頼を受けたりします。」
「そうなのか......依頼はどこで受けられるんだ?」
「まずは、冒険者ギルドの仕組みについて説明しましょう。
まず、冒険者はEランク、Dランク、Cランク、Bランク、Aランク、Sランクに分けられます。これは依頼を達成する事によって上がっていきます。冒険者はそれぞれ自分のランクまでの依頼を受ける事が可能です。ただし討伐依頼は受けていなくても討伐証明さえ出来れば、後から依頼達成となります。この時、自分のランク以上の討伐依頼を達成していた場合はそれを踏まえた達成数としてカウントされます。......ここまでで何か質問はありますか?」
「討伐証明はどうすればいい?」
もし魔物を倒しても、認められないなんてことになったら目も当てれない。
「討伐証明はその魔物の体の一部を持ってきてくれたら大丈夫です。また、魔物の素材を持ってきて頂けたらこちらで買い取ることができます。依頼の受付はこちらで行いますので、素材などがある時はお申し付けください。これで、ご説明は以上となります。何か質問はありますか?」
「依頼の強制とかは無いのか?」
「万が一魔物が、街を襲ってきた時は冒険者は強制招集がかかります。この招集に応じなければ冒険者の資格が剥奪されるのでご注意ください。他に質問はありますか?」
「いや、大丈夫だ。」
「そうですか。それでは、冒険者登録に移りたいと思います。代筆は必要ですか?」
「いえ、私が書けます。」
ここでミレナが初めて言葉を発した。奴隷という立場の為、あまりしゃべらないようにしているのだろう。
「そうですか。では、そちらに名前を書いて、血を一滴垂らして下さい。」
「それだけでいいのか?」
それだと、情報が名前だけになるのに......
「はい、ここには色んな事情を抱えた人がいますから。依頼させ受けてくれればそれでいいんです。」
「そうか、じゃあ名前を......」
「それでは、書きますね。」
ミレナは、サラサラと綺麗に文字を書いていく。
何て書いているのか読めないが、名前を書いてくれているはずだ。
「それでは、血を垂らして下さい。」
「分かった。ここに垂らせばいいんだな......」
タイチは差し出された小型ナイフを手に持ち、ゆっくりと指へと近づける。そして指に触れた後、少しだけ力を加える。すると、ピリッとした痛みがはしる。
「っ!よしこれでいいか?」
隣を見ると、ミレナも既に血を垂らし終えたようだ。
「はい、これで登録は終わりです。これをどうぞ。」
そう言って、受付嬢は銀の板を渡してくる。
「このプレートが冒険者の証となるのでなくさないようにして下さい。なくした場合は銀貨1枚で作り直せます。」
「分かった。ありがとう。じゃあ早速何か依頼を受けていいか?」
その時、盗賊の討伐の依頼書を目にした。
「なぁ、この討伐依頼ってのは......」
「あぁ、それですか......。それを受けるのはあまりおすすめしません。盗賊団の名前は『銀弾の龍鬼』。盗賊団のボスが魔法を使える上に、奴隷が異常に強く討伐団が壊滅したと聞きます。それに......何故か領主様が資金提供をしてくれないせいで、依頼報酬が低すぎます。ローリスク・ハイリターンです。」
「あぁ、盗賊なら倒したぞ。」
「えぇ、ですからやめてほいた方がってええええ!?倒した!?『銀弾の龍鬼』を!?」
受付嬢の人はさっきまでのしっかりとした口調が崩れ、驚いている。
「あぁ、倒した。」
「ちょ、ちょっと待っててギルドマスター呼んで来る!!」
そして、走って受付の奥へと去っていってしまった。
「もしかして、まずかったかな......」
「いえ、きっと良かったと思いますよ。それにご主人様に危害を加えるのは私が潰しますから。」
「いや、冗談はいいって。怖いから......」
森を抜け出してから、ミレナは少しこういう冗談を言う。明るくなったのはいいがどう反応すればいいかわからなくなる時がある。
「お待たせしました!!あの、ギルドマスターが奥の部屋へ連れてき欲しいそうです!。」
タイチたちは、受付嬢に案内されるまま奥の部屋へと行く。
「失礼します。タイチ様、ミレナ様をお連れしました。」
部屋へとはいると、そこにはメガネをかけた白髪の老人がいた。
「来たようだね。タイチ君にミレナちゃん。私はギルドマスターのトルトンという。君達が本当に『銀弾の龍鬼』を倒したのかい?」
「あぁ、倒したぞ証拠は無いがな。」
「いや、構わないよ。これから盗賊被害があるかどうかですぐに分かることだ。それよりも、盗賊達のアジトへは行ったかい?」
それは、きっとあの木の家のことだろう。あの中で、まる1日を通して過ごしたのだ。あの家のことなら多少は知っているつもりだ。......そういえば、宝箱の中身を持ってきてしまったけど、その事だろうか?
「あぁ、中にある物は貰ってきた。問題は無いはずだろう?」
「そうか......じゃあ良ければそれを預からせてくれないかい?その中には遺品もきっとあるんだ。公開して、持ち主を探したい。それにそちらの方が高く売れるのできっと貴方達にとっても都合がいいはずだ。もちろん、預かった物はギルドが責任を持って管理する。絶対に紛失なんてさせない。」
......確かに、あの品物には人が使っていた物も多くあった。きっと遺品なのだろう。だとしたらそれを持っているべきなのは、きっと自分ではない。
「分かった。それじゃあ、預けるよ。持ち主に届けてやってくれ。」
袋の中から、宝箱にはいた物を取り出す。......『仮想の苦痛槍』とミスリルナイフを残して。
......拷問器具と家紋付きのナイフ。拷問器具なんて、普通の人は持っていない。まして家紋が付いているような家が襲われて黙っているはずがない。だから、隠しておかなければならない。
「確かに受け取った。責任をもって預からせていただく。」
「それじゃあ、俺達は行くぞ。行こうミレナ。」
「はい」
タイチたちはギルドを後にした。
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