サンタクロースの捕まえ方

@evahks

サンタクロースの捕まえ方

今日は楽しいクリスマス


でも蒲郡三太は一人浮かない顔をしています。


なぜなら、ずっとひとりぼっちだからです。




他のみんなは、クリスマスコンサートで楽器を楽しそうに演奏したり歌ったり、大好きな人と綺麗な夜景を眺めて笑いあったり、家族のいる人は夕飯をどうするかでああだこうだと喧嘩しています。




そんな喧嘩することすら、蒲郡三太にとってはとても羨ましいことでした。


冬の寒い空の下、たった一人で過ごさなければなりません。


街行く人達はみんな手をつないだり笑顔で楽しそうに触れ合っていて、とても楽しそうです。




「うぅ・・・寒いなぁ・・・サンタクロースは一体どこにいるんだよちくしょー」




あまりにも寂しかったので、ふと目を閉じてみました。


(もし僕に友達がいたらみんなで音楽やりたいな。ラッドウィンプスの前前前世とかやったら楽しいだろうなぁ)


自然と蒲郡三太は鼻歌を歌い始めました。




(もし僕に大好きな人がいたら、とっておきのプレゼントをして驚かせたいな。どんな顔するだろう。喜んでくれるかな。何が欲しいか前もってリサーチしておかなきゃ)


自然と三太はポケットにくしゃくしゃになっていた紙を広げてアイデアを書き始めました。




(もし僕に家族がいたら、なんでも言い合ってたくさん喧嘩してたくさん仲直りしたいな。そして夜にはみんなであったかいお布団に入ってやりたいことをたくさん話して ワクワクしながら眠りたいな)


自然と三太は大きく胸いっぱいに息を吸い込み息を止めて胸に手を当てました。




ドクンドクン・・・心臓の音が聴こえる。


僕にはどんな時でも体を温めてくれる心臓がいつもここにいてくれる。


僕にはどんな時でも楽しい未来のイメージがいつもここにいてくれる。


僕にはどんな時でも楽しい未来のイメージを描く手とどこにでも歩いていける足がある。




「僕はできる」




三太はやりたいことを書いた紙を綺麗に四つに折り、ポケットに大切にしまって立ち上がりました。


三太は街の交差点に立ち、そして歌い始めました。


三太のすぐ目の前には、拾ったダンボールが立てかけられ、みんなに見えるようにこう書いてありました。


「あなたのほしいものは何ですか?今夜だけ僕があなたのサンタクロースになります」




するとどうでしょう。


三太の歌声にさそわれて交差点にいた人達が三太に向かって集まってきました。


そして、三太の歌声に合わせて一緒に歌を歌い始めました。


みんなの歌に合わせて楽器もなり始めました。ギターにピアノにドラムに手拍子!


三太は自分が願っていた夢を1つかなえることができました。


曲が終わってしばらくすると、みんなとても嬉しそうに三太に声をかけていきました。


「ありがとう!楽しかったよ!」




楽しかった余韻にひたりながら一人ぼーっとしていると、小さな女の子が泣きながら三太のところへやってきました。




三太「どうしたの?大丈夫?」


女の子「あのね、ママがね、お仕事がんばりすぎて倒れちゃったの」


三太「今、ママはどこにいるの?」


女の子「おうちにいるよ。だけどママ動けなくてご飯も食べられなくて苦しそうなの」


三太「パパは今どこにいるの?」


女の子「パパはいないの。だからママを助けてあげて」


三太「わかった。すぐ行こう」


三太と女の子は立ち上がって急いでママのもとへ向かいました。




家につくと咳き込む一人の女性が苦しそうに倒れていました。






女の子「ママー!!!!」


三太「突然おじゃましてすみません!この子に事情をうかがってやってきました。すぐに病院にいきましょう」


ママ「はぁはぁ・・・そうだったんですね。ご迷惑をおかけして・・ゴホゴホ・・! すみません」


三太「そんなことよりも早く病院に!」


ママ「でも、、病院にいけるだけのお金がないんです」


三太「そんな・・・わかりました。ちょっと待っててください。」




しばらくするとタクシーが家の前に止まりました。




三太「さぁ!はやく!いきますよ!」


ママ「・・・」


女の子「ママー!」


三太「意識がない・・・」




三太はママを担いで急いでタクシーに乗せます。




三太「運転手さん!はやく!急いで!」




病院ER




女の子「ママ大丈夫かなぁ・・・?」


三太「きっと大丈夫。君が僕のところに来てくれたから、ママが元気になるのもあっとゆーまだよ」


女の子「本当?」


三太「ああ、本当だよ。そういえば、名前聞いてなかったね。名前なんていうの?」


女の子「マナだよ」


三太「マナちゃんかー!マナちゃんもよくがんばったね。ママが元気になるまで一緒に頑張ろうね」


マナ「うん!」




翌日




チュンチュン・・・


冷え込む朝を病院の待ち合い室で三田とマナは目を覚ました。




医者「えー、光圀サナさんですね。光圀さんが倒れられたのは過労と栄養失調による衰弱が原因かと思われます。ただ、あと一歩遅かったら命に関わっていました。しばらく入院してしっかり食事と休養を取ってください。」


光圀サナ「・・・今日退院したいんです」




何か思いつめたように両手をぎゅっと握りしめ絞り出すように声を吐き出した。




医者「できるわけないでしょう!命に関わると言っているんですよ! しっかり休息をとるためにも入院してください!」


三太「・・・あの突然横からすみません。もし家で栄養もしっかりちゃんととって休養できるなら入院しなくてもいいんですよね?」


医者「まぁ、そうですが、、」


三太「わかりました。では、僕が責任をもって家で栄養と休息をとるようにしますので 今日のところは退院ということでも大丈夫ですか?」


医者「そういうことならわかりました。お大事にしてください。でもまだ絶対安静ですからお薬を処方しておきますね。」




帰り道




光圀「あの、、本当になんとお礼を言ったらいいか、この子のためにも入院して仕事を休むわけにいきませんので・・・」


三太「そうですよね。でも今は体を休めてくださいね。お医者さんも命に関わると言っていたじゃないですか。光圀さんがすごくがんばっているのわかります。でもマナちゃんはあなたがいなくなったらひとりぼっちになってしまうんですよ。仕事とお金のことは心配しないでください。僕がご飯も作るしお金も入れます。とにかく今は何も心配せずにゆっくり休んでください。」




ずっと塞きとめられていた何かが崩れ去り、光圀サナの瞳からは涙がこぼれた。




光圀サナ「どうして、、そこまでしてくれるんですか?」




涙を見せまいとこらえながら絞り出す声で三田に尋ねた。




マナ「ママ!あのね、おじさんはサンタさんなんだよ。」



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