10 ザビエルと呼ばれて(未完)

朝。洗面台の鏡の前で頭に手をやると、掌に十数本ほどの抜け毛がついてしまい、私は深いため息をついた。

加齢とともに、毛が多く抜けるようになって来ていた。それも定年退職してからは目に見えて増え、二年経った今では、皮膚が見え始めた頭頂部がつるりと光っていた。


家の周りの散歩を毎朝の日課にしているのだが、通学途中の小学生達にが私を指差し「ザビエル」と言って笑いながら走り去っていた一週間前の出来事は、生涯忘れる事は出来ないだろう。

「お父さん、抜け毛酷いね」

OLの娘が歯を磨きながら、私の頭を見て言った。

「そうだなあ」

私はうな垂れる。するとあのさあ、と一度口を漱いでから、娘は私に提案してきた。

「カツラ作れば。東京に良いカツラ屋あるらしいよ」

「少し抵抗がある」

けれど一週間後、娘と妻は私を東京に連れて行き、そこで私専用のカツラを作ってくれた。

最後の四肢切断をする思いだった。


(即興小説トレーニング様より)

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