1000000円の嫁アプリ
ちびまるフォイ
おわかりいただけただろうか・・・
「あんた、早くいいお嫁さん見つけんさいよ。
自分一人で家事もできないのにこれからどう生きていくのよ」
「うるさいなぁ、わかってるよ。
男のひとり暮らしなんてこんなもんなんだって」
「心配だわぁ」
連休だから実家に帰ると両親の小言を聞かされてしまった。
やることもなかったのでベッドでスマホをいじっていた。
「嫁……アプリ?」
"あなたも嫁アプリで新婚生活をエンジョイしていませんか?"
遊び半分でインストールしてみると説明画面が開く。
「嫁アプリは新婚生活を体験するアプリです……。
お好みの子を選んでください、ってか」
一番清楚っぽい嫁を選んだ。
嫁はよくある美少女ゲームのように画面を挟んで言葉をかけてくれる。
「あぁ、こういうのね」
一時期はよくやっていたけど、だからモテないのかもな。
アプリを消そうと思ったがリストが視界に入った。
→部屋の掃除
*****
*****
****
「なんだこれ」
選んでみると画面にウィンドウが開いた。
"スマホを自宅に置いてください。"
実家を離れ、ひとり暮らしの小汚い部屋にスマホを置いた。
コンビニから帰ってくると、部屋はぴかぴかになっている。
「すげぇ!! 本当に掃除されてる!」
『もう、あなた。脱いだ靴下はちゃんと洗濯機に入れないとメッだよ?』
「フヘヘへ……サーセン」
なにこのサービス。
部屋はわずかに女の子の香りが残り、新妻の気配を感じる。
まるで俺がコンビニに行っている間に、
画面の嫁が掃除してくれたみたいだ。
現実と2次元の境界線があいまいになっていくみたい。
「ようし、どんどん掃除してもらおう!」
その後も、お掃除機能を使いまくって新婚生活を満喫した。
ある日間違って非表示の項目を選んでしまった。
『この項目は解放されていません。1000円課金してください』
「……なにがあるんだろ」
1000円課金してみると、文字が見えるようになった。
部屋の掃除
→洗濯をする
*****
****
「へぇ、いろんなことできるようになるんだ」
今度は洗濯を選ぶといつもの画面が表示される。
"スマホを自宅に置いてください。"と。
部屋を出て書店で時間をつぶして家に戻ると洗濯が終わってキレイに畳まれている。
さらには直筆のメッセージまで。
"あなたへ。 いつもお疲れさま"
「フォォォォォ!!! なにこの機能! 最高すぎる! 課金してよかった!!」
部屋のクリーニングサービスを雇うよりもずっといい。
姿が見えない新妻との新婚生活……最高すぎる!
「次の項目はなんだろう!?」
部屋の掃除
洗濯をする
→*****
****
『この項目は解放されていません。10000円課金してください』
「1万かぁ……けっこうするなぁ」
勇気を出してアンロックしてみると、食事機能が追加された。
嫁の手料理が食べられるなんて課金してよかった。
"スマホを自宅に置いてください。"
食事を選んでスマホを置いたまま部屋を出る。
ゲームセンターで時間をつぶして家に帰ると食事ができていた。
"あなたの好きなしょうが焼きを作りました。今度は一緒に作ろうね"
「作りゅ作りゅ~~♪♪」
もう食べる前からメロメロだ。
ラップに包まれた食事は普段インスタント生活の俺にはフルコース料理に見える。
「あぁ……新妻の味がする……!!」
どこか家庭的で愛情を感じる味わいに幸せで死にそうになる。
これが新婚生活。地上の楽園とはここだったのか。
気になるのは最後の項目。
「今度はなにができるんだろう」
部屋の掃除
洗濯をする
食事を作る
→****
『この項目は解放されていません。1000000円課金してください』
「ひゃくまっ……100万円!? 高っけぇ!!!」
いったい何をしてくれるんだ。
100万円ともなるとこれまでのノリでは課金できない。
この4文字に隠されたサービスっていったい……。
「4文字……お風呂に入る、は"お"を抜いても5文字だし。
買い物、は3文字だし……うーーん」
思いつかない。
諦めかけたとき、最後の答えが脳裏を貫いた。
「セックス…………4文字だ!!!!」
これしかない。
他にも4文字の候補は思いつかないだけであるかもしれない。
だが、これしかない。そう信じたい。
100万円を振り込んでアンロックさせる。
どうか予想通りの項目になるよう祈りながら画面を見た。
部屋の掃除
洗濯をする
食事を作る
→セックス
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
勝った!! 俺は勝った!! 予想通りだった!!!
100万円課金してよかった!!
鼻の下を伸ばしながらセックスの項目を選んだ。
『あなた……今日、いい?』
恥じらう嫁アプリが妙にエッチで鼻血が出そう。
アプリにはいつもと違うメッセージが表示される。
"スマホを自宅に置いて、待っていてください"
どうなるんだろう。
実体化した嫁として女の子が部屋に来るのだろうか。
なんにせよこの先待っているのは最高の展開。
いまにも派遣される女の子を抱きしめたい衝動に駆られる。
でも、待て℃暮らせど誰も部屋にはやってこない。
「おかしいな……。スマホのGPSとかで場所判断できるだろうに」
『あなた……』
「もしかして、めっちゃ渋滞に巻き込まれてるとかかな」
『……あなた、こっちに来て♥』
背中から聞こえる色っぽい声に発情寸前になる。
すでに来ていたのか。玄関ばかり見ていた。
俺は服を脱いで、襲い掛かるように振り返った。
『あなた、今日は私をずっと愛してね♥』
振り返った先には、スマホに手足が生えた怪物が待っていた。
画面には嫁アプリが映っている。
「あっ……」
そうだった。
部屋にスマホ置いてた時、窓もドアも鍵を閉めていた。
『さぁ、ひとつになりましょう♥』
画面の愛おしい顔と、スマホから生えた手足の不気味さに
俺は100年の恋も冷めきって裸のまま部屋を出て警察に捕まって、拘留所でこの小説を書くに至る。
1000000円の嫁アプリ ちびまるフォイ @firestorage
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