第3話 懸案事項
作戦終了後、雨儀は自分が指揮した部下たちと合流。雨儀が裏で指揮をとっていたことを知った部下たちは、驚きはしたが非難の声はなかった。
今はバギーに乗って、男たちのアジトへ向かうところだ。
「まさか、本当に鹵獲できてしまうとはな。地下の電線を使って足止め程度ならしたことはあったが……雨儀?」
「……っ」
パシンっと乾いた音を立てて、雨儀の平手が男に直撃する。雨儀の顔は赤く、羽織っているコートで身体を隠す。
そう、雨儀はコート以外全裸であった。
「なんで言ってくれなかったの、トーギ。こんな格好だって」
「言ったら余計気まずいだろ。僕はお前みたいなガキに興味無いが、お前さんは気にする。これも粋な計らいってな」
「誰がガキですって。私はもう28歳なっ……のょ」
男、トーギは明らかに20手前の少女に向けて、やれやれと口にする。
「お前さん、2082年から来たってのは疑いようのない事実なのか」
「うん。急に若くなっていてビックリしているし、何より東京が壊滅的状況のままなのが信じられない」
雨儀のいた時代、2082年では東京は新しい姿を迎え、電気水道燃料のインフラが完全に整備されていたし、多くの高層ビルが建ち並んでいた。
しかし、こっちで目覚めた瞬間、そのすべてが崩壊していた。インフラについては未確認だが、電線に電気が通っているのは東儀から聞いていた。
「だよな。あのロボの動きを完全に予測していたし、弱点も知っている。信憑性がどうのとか気にするレベルではないな」
「今が2063年、周囲の状況からも納得がいく。でもこれって過去に戻ったってこと。まさか、タイムスリップとか」
「あぁ、原因の検討はつかないが可能性は高い……しかし、困った。予想した状況と真逆だ」
トーギは歯に詰まった黒胡椒を噛んだような顔で、片手をハンドルから口元へ持っていく。
「一つ聞きたい。お前が居た2082年、そこに "政府" は存在したか」
雨儀はこの質問に何か深い意味があるのかと忖度したが、結局、日本政府は戦前と同じくある、と答えるだけであった。
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