第36話ビールはラガーにかぎる。

「あー、お腹いっぱい、もう無理~。」


ふーっと息を吐き、駐車場から車を発進させる。


「そりゃあ、あれだけ食べればね。」

半ば関心と呆れの念を込めて言う、

店の隣にあった、コンビニで購めた、キリンラガーをプシュッとあけ、ぐいっとやる。

うまい!


「でもいつも不思議、なんで店で飲まないの?食べながら飲めばいいのに?」


「食べながら飲むことだってあるよ?」


「そう?見たことないけど?」


これまたご当地グルメ、「すしべん」なる金太郎をモチーフにしたマスコットの定食屋に入り、

たらふく食べた。

店名とは相反し、寿司は握ってくれない。


あまりにも数多くその看板が目についたものだから、ゴーゴーカレーを食べたあと、

つぎに「すしべん」を見かけたら、入ろうっていうことになり、入ったのだ。

のどぐろの握りが食べたいと行き勇んだが、寿司はメニューに載っていなかった。


丼もの、うどんそばの店だったのだ!

すしべん!


美沙は、天ぷらうどんにカツどん、わたしはねぎとろ丼をとった。

特に可も不可もなく、値段なりというところか。


車を出し、再び159号線を南下した。

前にダンプカーが法廷速度で走っており、片側一車線のため、後ろから黒いプリウスがあおってくる。

あおってこられても、こちらもダンプが前をふさいでいる以上、どうすることもできないのであって、

どうしろというのか、まったく意味がわからない。


「あるんだな、これが。」


「いつよ?」


「いつだかは教えられないけど、瓶ビールがおいてる店ならいつも飲むよ。」


「いまのところにも瓶ビールあったんじゃない?」


「ノンノンノン、瓶は瓶でも、キリンならラガー、アサヒは元から飲まない、サントリーなら

プレモル、サッポロならどれでも、それ以外は店では飲まんのだよ。

生は絶対に飲んではいけない。サーバーを常々洗浄していない店がこの世にはあふれかえっとる。」


「ふーん、そんなこだわりが・・・。とりあえずのめれば何でもいいのかと思ってたわ。」


「ナビ、入れなくていいの?」


「とりあえずは大丈夫だと思う。このまま真っ直ぐ行けば8号線にあたって、あとは8号線をひたすらいけばいいだけだと思う。」


馬鹿なプリウスは空ぶかししながら右折レーンへ反れていった。

追い抜かれざまに中指を突き立ててやろうとしたのを、美沙に制された。

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