Swan Song
この「緑の大陸」の民に伝わる神話。
はるか遠くにある「聖なる星」からやって来た神々が、この世に様々な知恵と富をもたらした。
僕らは、それら「聖なる星」の宝から生まれた。
「魔法戦士」と呼ばれる者たちがいる。そして、彼らに従う「マスコット」と呼ばれる動物たちがいる。
化け犬「カバル(cabal)」、化け猫「キャスパルグ(cathpalug)」などといった、言葉と魔力を持つ動物たちだ。彼らは主人である魔法戦士たちと共に行動し、生きている。
魔法戦士やマスコットたちは様々な魔法を使うが、彼らには究極奥義というべき必殺の魔法がある。それは、一生に一度しか使えない。
白鳥は、死ぬ間際に歌うという。それで、文人の遺作は「スワン・ソング(白鳥の歌)」と呼ばれる。そして、魔法戦士やマスコットたちの、文字通りの必殺技が「スワン・ソング」なのだ。「必殺」とは、自らに対してだ。
魔法戦士やマスコットは、一生に一度の歌を歌い、自らの全ての魔力を解き放つ。その魔法の効果はそれぞれ違う。ある者は死者を生き返し、また、ある者は一つの都市を滅ぼす。
自らの命と引き換えに、強大な魔法を用いる。それがスワン・ソングだ。
もちろん、全ての魔法戦士やマスコットがその歌を歌うのではない。むしろ、その必要もないまま生涯を終える者の方が多い。ある者は敵との戦いに敗れて死に、また、ある者は平穏無事に眠りにつく。
その者がその歌を歌うかは、神々が決める事だ。
魔法戦士やマスコットは、この世に生まれた時点で、神々からそれぞれの「歌」を授けられる。それらは普段は、それぞれの頭の中に収まって眠っている。そして、「その時」が来るまで「歌」は封印されている。
普段の魔法戦士やマスコットたちは、歌がうまい者もいれば、下手な者もいる。普通の歌なら、いくら歌っても死にはしない。あくまでも、ただの音楽なのだからね。
スワン・ソング以外にも、音楽の魔法はいくつかある。歌や楽器の音色で生き物を癒やしたり、眠らせたり。あるいは、戦の前に歌って味方の士気をあげたりする。プロの吟遊詩人の中には、そのような歌や演奏を披露する者が少なくない。
僕は「普通の」音楽の魔法は何度か見て聴いた事があるけど、さすがにスワン・ソングの現場は見た事がない。まあ、あまり見たいものではないよね。それで歌った本人が死んじゃうんだもんね。
ましてや、僕自身がそんな状況に追い込まれるのは避けたいね。まだまだ長生きしたいのだし。でも、僕がスワン・ソングを歌う事態になるかどうかは、神々が決める事。その時はその時だ。
この「会盟の樹」、世界樹がある限り、僕はみんなを励まし、楽しませ、慰める歌を歌う。今の平和な世の中が続くのを祈りながらね。
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