黄金西遊記
ドリームジャーニーは儒者嫌いである。彼は「曲学阿世」の公孫弘に噛み付いたが、返す刀で、公孫弘の政敵だった
「おのれ、この馬め。生かしてはおけぬ」
ドリームジャーニーの弟オルフェーヴルは、武帝に兄の助命嘆願をした。しかし、武帝は首を縦に振らない。
「お前もこの兄に連座して死ぬが良い」
「陛下、どうか我々〈黄金一族〉の有用性を認めてください。我々は西域の汗血馬以上の名馬です」
「ほほう、大した自信じゃのう。面白い。そなたたち一族を許そう」
「ありがとうございます!」
「ただし、そなたには不老不死の薬を探してもらう。不老不死の薬は、西域の汗血馬たちが持っているそうじゃな。そやつらと共に薬を持って来い」
「分かりました」
オルフェーヴルは、一頭だけで西域に旅立とうとしていた。そこに、同じ〈黄金一族〉の名馬であるゴールドシップが来た。
「オルフェ兄ちゃん、俺もついて行くぜ」
「ありがとう、シップ」
こうして、オルフェーヴルとゴールドシップは西域へと旅立った。
西域には、様々な民族の商人たちが行き来している。その中に、鹿を売る商人がいた。
「なんか、昔の趙高の話を連想するぜ」
ゴールドシップは言う。趙高とは、秦の悪徳宦官であり、鹿を馬だと偽って二世皇帝胡亥を惑わしたという。趙高は最後には、胡亥の跡を継いだ最後の秦王に処刑されたが、それはさておき、問題の商人が扱う鹿が奇妙だった。
その鹿は、普通の鹿の糞の代わりに黄金の粒を排泄する魔法の鹿だというのだ。
「どうせ、種も仕掛けもあるだろうさ。さっさとずらかろうぜ」
ゴールドシップはせせら笑う。オルフェーヴルは、異母弟ゴールドシップに早く目的地を目指すのを勧められる。オルフェーヴルは他の商人たちが扱う品々が気になるが、やむを得ず市場を後にした。
夜になり、オルフェーヴルとゴールドシップはオアシスにたどり着き、泉の水を飲み、草を食べる。そして、その場に座り、眠る。
オルフェーヴルは夢を見ている。彼は子馬に戻っており、母オリエンタルアートの乳を飲んでいた。そして、ゴールドシップもまた、夢の中で子馬に戻り、母ポイントフラッグの乳を飲んでいた。
あの夜空の天の川の向こうに、父ステイゴールドと母たちはいるのだろう。
「兄ちゃんたち、大変だ!」
オルフェーヴルとゴールドシップは、自分たちを呼ぶ声で目を覚ました。日が昇ると共に、自分たちの異母弟であるウインブライトが駆け寄ってくる。
「ブライトじゃないか! どうしたんだ?」
ウインブライトはひとまず自らの呼吸を整えて、驚くべき知らせを異母兄たちに伝える。
「陛下が亡くなったので、任務は解除された」
「何だと!?」
「ジャーニー兄貴は無事か?」
そこに、そのドリームジャーニーがやって来た。オルフェーヴルは歓喜の涙を流す。
「兄ちゃん、無事だったんだね!」
「おう、あのクソ劉徹がくたばってくれて清々したぜ。こうなったら、みんなで一緒に旅をしようぜ」
ドリームジャーニー、オルフェーヴル、ゴールドシップ、ウインブライトは改めて西域を旅する事にした。そんな彼らに、さらに他のステイゴールド一族の馬たちが次々と合流していき、やがて〈ステイゴールド血盟軍〉と呼ばれるようになった。彼らはペルシャからローマへ、さらにはローマからブリテン島へ渡り、ある泉にたどり着いた。
ゴールドシップは言う。
「これが聖杯の泉だ!」
その泉は様々な奇跡をもたらした。
数百年後、ドイツの学者ハインリッヒ・ファウスト博士は、悪魔メフィストフェレスと一緒に旅をしていた。彼らはブリテン島の〈聖杯の泉〉にたどり着いた。
「先生、ここがアーサー王が水を飲んだ〈聖杯の泉〉です」
「ほほう、なんて清冽な泉の水なんだろう」
ファウストは泉の水を飲んだ。すると、彼の体内にステイゴールド一族の生命力が宿った。
「よっしゃ~! 俺は生きる事それ自体が存在意義なんだ!」
ファウストは野山を駆け巡る。メフィストは苦笑いをしつつ、ファウストの後を追った。
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