第10話天王寺杏奈




あの襲撃から一週間経ったある日。新旧平等派学園支部から連絡を受けた。このことは学園長から担任、そして生徒へと伝えられることとなった。



そしてあさのホームルーム。襲撃から一週間経っていて流石にまたいつもの学園生活に戻っていた。だが、明らかに変わったことがあることを学園内の人たちは皆知っている。

それは、


「一週間前の新旧差別派の襲撃で差別派に学園長と教頭の能力が割れてしまったので、今日から先生を1人学園長補佐役として新旧平等派から呼びました。どうぞ入ってください」


すると、教室に1人の女性が入ってきた。その姿を見て、教室がざわめいた。


「彼女は天王寺杏奈。新旧平等派のエースにして現世界ランク1位です。この人が私の代わりに担任をします」


と学園長が言うと、天王寺杏奈という女性は、


「では自己紹介をします。最初に私の名前は天王寺杏奈といいます。ランクはAランクです。先程の紹介にもあったように、現在は世界ランク一位となっています。出身は覇王学園で、学園長の生徒でした。気軽に話しかけて来てください」


と天王寺先生は簡単に自己紹介をすると次は質疑応答の時間になった。


「ステータスについて教えてくれますか」


ある男子生徒が聞くと


「さっきも言ったようにランクはAランク。魔力量、攻撃力はAランクで、防御力はBランク、魔力制御はB+ランクです」

それでは

「他に質問はありますか」


そう聞くと今度は女子生徒が質問をする。


「固有武装について教えてくれますか」


その問いに対し天王寺杏奈は


「固有武装の名前は3種の神器ゼウスマキナといいます。能力は教えられません」


時間はあと少し残っている。だから、


「そろそろ最後の質問に入ります」


というと誠一郎は手をあげた。すると視線が自分に集まる。

そのまま構わずに質問する。


「新旧差別派について知っていることを教えてください」


と告げると、


「新旧差別派は今、平等派と対立関係にあり世界各地で争いをおこしている。この戦争はすぐには終わらないと思います」


「何故そんなことがわかるんですか」


前の襲撃は学園内の誰かが学園の警備について新旧差別派に情報を渡していると踏んでいた誠一郎はそう聞くと


「私個人の見解だけど」


と前置きをひとつ入れてから話始めた。


「新旧差別派はリーダーが変わってから年々組織が巨大化していて、少しずつではあるけれど戦闘員のレベルも上がっている。日本は一番伸びしろが高い。そして日本の支部にもかなりの数の差別派がいます」

それに対して


「私達平等派は差別派に比べて明らかに組織の大きさが大きくなるのが遅い」


声のトーンを落として天王寺杏奈は言った。そして言葉を続けようとしたとき


「戦力を拡大させるまで差別派の攻撃を耐えられるかどうかが鍵になる、そういうことなんですね」


誠一郎がそう言うと天王寺杏奈の目が驚いたとばかりに見開かれる。


「ここには二重の結界が張られていてそう簡単には中に入れないようになっています」


「だけど差別派のリーダーの男には普通の結界は意味がありません」


と地面に目を向けると


「それはどういう意味ですか?」


そう誠一郎が聞くと天王寺杏奈は顔を上げて


「日本支部のリーダー、大城御霊(みたま)の固有武装は断魔の手(だんまのて)という物でこの固有武装で触ったものに対して向かう魔力を弾くという物です」


いいですか。


「奴には魔法や魔力を通した固有武装は通じないんです。しかし」


「方法はある」


と誠一郎が言葉を繋ぐ。


「まさか、もう攻略法を導きだしたのですか?」

杏奈が尋ねると


「いいえ。しかし渡り合う方法はあります」


それはすぐには効果が出ないが攻撃を耐えられれば戦える可能性が出てくるものだった。それは、


「まずはあなたが信頼できる人かどうか確かめさせてください」


「解ったわ。それじゃあどうすればいい?」


「杏奈先生、クラス委員長の朝井くんの目の前に立ってください」


杏奈は朝井の前に立った。確かめる方法、それは相手の心を読む固有武装を持つものが杏奈の心のなかを読むことだった。


「ありがとうございます。嘘をついていないことがわかったので渡り合う方法を教えます」


そう言ったとき、ホームルーム終了の鐘が鳴ったため


「チャイムが鳴ったためこの話の続きは帰りにします」


そういうと、ホームルームを終了し教室から去った。



授業を乗り越えて帰りの時間になった。誠一郎はホームルームの時間では終わらなかった差別派と渡り合う方法について説明した。


誠一郎が言った意味を解釈するとこうだ。


誠一郎はすべての体術を習得していて、その体術を使ってリーダーの男を倒すというものだった。


「そんなので本当に成功するの?」


不安そうに聞いてきた。


リーダーには魔法や魔力を通した固有武装は通じないということで固有武装無しで素手で戦うということだった。


「問題ありません。リーダーについては僕の方でどうにかします。そして覇王剣祭の開催を早めてくれますか」


それは何故か、と杏奈が聞くと、


「この学園はいつ攻められてもおかしくない状況です。なので早めに覇王剣祭を終わらせて学生もいざとなったら戦えるようにしておくことがいいと思います」


「解ったわ。今すぐ相談してみるね」


杏奈はそう言うと学園長室へと向かった。




学園長室


そこには学園長、神崎舞姫を呼んだ張本人の天王寺杏奈の姿があった。


「神崎先生、いいえ学園長、お話があるのですが少しよろしいですか」


杏奈が学園長を呼んだ理由、それは先程誠一郎と交わした約束のことを学園長に相談するためだった。


「何ですか?天王寺先生」

「あの、実は先程クラスで覇王剣祭の開催を早めて欲しいと赤城くんから言われました」


どうするか杏奈が問おうとしたとき学園長が口を開いた。


「貴女には言っておいた方がいいわね」


実は


「もう既に新旧平等派の上の方から覇王剣祭の開催を早めるようにとお話があったんですよ」


「えっ?そうなんですか」


と驚いたように杏奈。


「明日、臨時集会を開きます。そのときに覇王剣祭のことについては言いますよ」


そして


「さらには、差別派に居場所が割れたということで学園都市を移動することになっています」


もう話は終わりかと聞いてきたので杏奈は話を切り上げると学園長室から姿を消した。




続く














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