悪魔【ベトナム】
その日、小学生のDちゃんは友達と遊んでいた。
夕方になり、そろそろ帰ろうかと話していたら、可愛らしい女の子が少し離れた場所から声をかけてきた。
「ねぇ、こっちで遊ぼうよ」
知らない女の子だった。歳は二人と同じくらいに見えた。Dちゃんはもちろん断るつもりだったのだが、友達は女の子が手招く方へと駆け出していた。
「待って、そっちはだめ! そっちは」
Dちゃんの言葉を掻き消すように、ドーン! と激しい爆発音がして、粉塵が舞い上がった。Dちゃんはその場にうずくまり、両膝をぎゅっと抱え込んだ。
待って、そっちはだめ。そっちは地雷原だから――
数分後、ゆっくり立ち上がったDちゃんが見たのは変わり果てた友達の姿だった。
しかし、友達の隣にいたはずの女の子がいない。あんなに近くにいたのだから、きっと彼女も無事ではないだろう。
爆発音を聞き付けて集まって来た大人に事情を説明すると、付近を探してくれることになった。だが、どんなに探しても彼女は見つからなかった。背格好や顔の特徴など覚えている事を全て話したが、大人達は「そんな子供は見たことがない」と首を
地雷原の近くの集落では大人は子供にこう言い聞かせるそうだ。
「あそこには悪魔がいるから近づいちゃいけないよ」
これは、単に子供を危険から遠ざけるための嘘だろうか。
もしかしたら悪魔は可愛い女の子の姿をしているのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます