第7話
冒険者が買い物をし易いようにだろうか?
冒険者に欠かせない店は直ぐ近くに固まっていた。
服屋も武器屋から見える場所にある。
店の中に入ると、冒険者が好んで着るような動きやすい服やマントなどが並んでいた。
並んでいる商品を見ると店の特徴がよく分かる。
差し詰め冒険者御用達の店なのだろう。
シエラの見立てで衣服とマントを揃えると、俺は直ぐにそれに着替えた。
汚れが目立たないベージュ色のズボンに長袖、腰にはベルトを巻き先程買った剣の鞘を固定した。
丈夫な革のブーツを履き、道具袋を腰から下げる。
その上から黒のマントを羽織っている。
これで見た目だけは、どこから見ても冒険者だ。
「良くお似合いです」
「ありがとうシエラ」
「次は防具ですね。
ユウヤさんはステータスが低いので、防具を装備すると動きが極端に落ちますがどうしますか?」
「そうなのか?」
「防具は頑丈に出来ている分、重量がありますから……」
ステータスが低いと言われて悲しくなる。
だが俺のレベルはまだ1、これからだ。
伸び代は十分あるに決まっている。
「じゃあ防具は必要ないな。
俺は回避に専念するよ」
「私もそうした方がいいと思います」
シエラは嬉しそうに同意した。
「もう買う物がなければ宿にもどろう」
「そうですね。
あと必要なのは保存食ですから、それは依頼を受けた後に購入しましょう」
「依頼は明日からにして今日は宿でゆっくりしないか?」
もう既に昼過ぎ、今から依頼を受けるのは遅いとシエラも感じたのだろう。
シエラが頷くのを確認すると俺は服屋を後にした。
俺に寄り添うよに歩くシエラ。
通りを行き交う通行人には、俺たちは恋人のように映っているのかもしれない。
宿に戻ったがまだ陽は高い。
この世界に来て気になったことをユウヤは訪ねた。
「シエラ、俺はこの世界に来た時、店の店員に拘束されたがなんでなんだ?」
「新たな異世界人を発見した人には懸賞金が支払われますから……」
「それでか……、この世界の言葉を話せなければ直ぐに分かるもんな」
シエラは申し訳なさそうに俯き表情を曇らせた。
別にシエラが悪いわけではないのだが、懸賞金を出しているのは教会である。
そして、聖女やその候補たちは、異世界人と意思疎通ができるように、異世界語や異世界のことを学ばされる。
そのため、少なからず教会に関わっていたシエラも責任を感じていた。
「申し訳ありません」
「ん?
別にシエラが悪いわけじゃないだろ?」
「ですが……」
部屋の空気が重くなるのを感じて俺は話題を変えることにした。
「あっそうだ。
武器屋のオヤジが目利きが出来るのかって聞いてただろ?
実際どうなんだ?」
急に話題が変わりシエラはきょとんとする。
でも、これがユウヤの優しさだと気付くと笑顔を見せた。
「私は鑑定眼を持っているんです。
それで物の善し悪しが数字で見分けられます」
「鑑定眼?」
「はい。
例えば剣を見たときに、その剣の攻撃力が数字で分かるんです」
それで剣を選ぶとき、じっと剣を見てたのか。
ってことは、俺の持ってる剣は安物の中では攻撃力が高いんだろうな。
「凄い能力じゃないか」
「でもこのことは言わないでくださいね。
色々と目立つので……」
「目立つ?」
「
素性がバレると面倒ですから……」
シエラはそう言ってまた落ち込んでしまった。
どうやら
「安心しろ、絶対誰にも言わない」
安心させるように笑って話しかけるとシエラも笑顔で返してくれる。
その優しさが嬉しかったのだろう。
シエラの瞳の端には涙が浮かんでいた。
シエラの気持ちが落ち着くのを待ってから、俺は明日のことを話し始めた。
「明日、依頼を受ける前にシエラのステータスを見せてくれないか?
お互いのステータスを知っていた方がいいと思うんだ。
それで受ける依頼も変わってくるだろうしさ」
「そうですね。どうぞ」
シエラは俺に近づくとベッドの端に腰を落とした。
二人は肩を並べてシエラの認識票を覗き込む。
ランクG
種族 人間
名前 シエラ・フォーゲル・シュタイン
年齢 16歳
Lv 2
HP 76
MP 86
攻撃 38
防御 43
魔力 56
抗魔 61
敏捷 42
耐性 97
魔法 治癒魔法(初級)
えぇ……
俺より全然強いじゃん
ユウヤが顔を引き攣らせていると、心配そうにシエラが覗き込んできた。
「どうかしましたか?」
「い、いや、種族は人間になるんだなって……」
「私は
シエラは嬉しそうに笑みを浮かべた。
人間と表示されるから、これまで人間の中で生活ができた。
そして、これからも人間として生きていける。
それが何より嬉しかったのだ。
笑顔を向けるシエラに俺も微笑み返す。
「そっか、良かったな」
「はい」
俺は改めてシエラのステータスに視線を落とす。
あれ?
ステータスに鑑定眼がない。
なんで表示されてないんだ?
「シエラ、鑑定眼は表示されないのか?」
「鑑定眼はスキルではなく種族の特性によるものですから。
力を持った
言われてシエラの瞳を覗き込む、美しい真紅の瞳はまるで全てを飲み込むように輝いていた。
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