第五十九話『僕らの街』

「そうね!じゃぁ、行くわよ!!私がタカシに見せたい場所に!」

と、ニコはそう言って歩き出した。

ニコは元気よくブンブンと腕を振っている。

今日は結構歩いたのに、まだまだ元気なニコだ。

そしてドンドン進んでいく。


「うん、見せたいところって?」

と僕は聞く。

そう、朝も見せたいとこがあると言っていた。

一体どこだろうか、今日は、町も結構隅から隅まで見たと言っていいくらい歩き回ったのだ。なのでいままで見たことなかったお店なども見て回ることができた。


「ふふ、だまってついてきなさい!」

とニコは言った。

僕はそれ以上聞くのはやめて、ニコについていく。

説明を聞くより、見たほうがわかる場所ということだろう。


「だいぶ、暗くなってきたね」

と、僕は呟いた。


だんだんと日が落ちる。

そして、ぽつぽつと明かりが灯る。

歩き続けると見たことある景色にたどり着いた。


「あ、学校だね」

「うん、でももっと先!」

僕らは商店街?から戻ってきて、学校を通り過ぎ、さらに、高台に歩いて行く。

いわゆる裏山だ。

ここは山、というか丘だが、街の敷地内でここには、モンスターはやってこない。


「ついたわ!」

と、ニコは言って、ちょうど座れる岩のような物があったので、それに椅子代わりに座った。


「タカシもここに座って!」

と岩の椅子のちょうどもう一人分座れるところをポンポンと叩きながら僕を呼んだ。


「この景色は・・・」

と、僕は、その岩の椅子に座って見えた景色に呟いた。


「そう、これが『私達の街』!」

とニコが言う。


ここは、今日街のいろんな人に会ってきたが、その街全体が、一望できるスポットなのだった。

手前に学校があり、その奥に今日見て回った、商店街がある。


「これが、私達が守っている街全体よ!そして、タカシが守っている街よ!」

とニコが微笑んだ。


「そうだね、今日いろんな人に会ったから、かなり実感が湧いたよ!子どもたちも、おじさんも、おばさんも、ここで一生懸命生きているんだな・・・」

「そう、キングゴーレムなんてしばらく倒せないと思ってたのに!タカシが倒しちゃった!これで大分平和になったんだよ!」

とニコが微笑む。


「キングゴーレム、止めは刺したけど、もちろん一人じゃ倒せなかったから、みんなの力だと思う」

と僕は正直に答える。特に謙遜というわけでもなくそれが事実だ。


「うん、でも・・・かっこよかったよ・・・」

と、ニコが顔を赤らめながら言う。


「え?」と僕が聞き返す。


「もう!!そういうの聞き返さないの!!」

とニコがいつものテンションに戻って、抗議する。

ほんとに聞こえなかったんだけどね。


「うん、でも、やっと実感が湧いてきた。ここが僕らの街なんだね」

と、僕も微笑んだ。

僕らはこれからもこの街を守っていく。

そう決意を深めるのだった。


「そう!これを見て欲しかったの!」

とニコは微笑んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る