第二十九話『個別訓練』
「みんな、どんな体力してんだよ・・・」
と僕は呟いた。
「パパッと十周するわよ!」
とニコはニッコリ笑ってそう言った。
みんな伊達に、モンスターと戦っているわけではない、ということがしっかりわかった。
スキルを持っているから、特別に彼女達が防衛員をやっているというような、ことを言っていたけど。
ぜんぜんそれだけではない。
この子たちは、ほんとに強い・・・。
「仕方がない・・・頑張ろう・・・」
と、そこまで想像したら、自分も頑張らなくてはならないな、という気持ちになった。
そして、走り続ける。
「よし、じゃぁ、先に言ってるから、頑張って十周するのよ!」
とニコは、行ってしまった。
「がんばれ、タカシ!」
とリオンも言って先に行ってしまった。
「頑張ってね!タカシくん!」
とヒカルも行ってしまった。
そう、ここまではみんな、僕に合わせてゆっくり走ってくれていたのだ。僕に合わせてると、彼女達のトレーニングにならないのだろう。僕に目標を与えたら、彼女たちのランニングは彼女たち自身のためのランニングに変わった。
「みんな、めちゃくちゃ早いんですけど!!」
今まででも十分速かった。
そのスピードで、すでにバテバテになっている、帰宅部の僕は、颯爽と視界から消えていく、彼女達に向かってつぶやいた。
そして、途中、歩いたりしながら、回復したら、また走る。
みたいなことを繰り返して、なんとか10周してゴールにたどり着いた。
「ゴ、ゴールできた・・・」
と、ゴールで、土に倒れかかるように、寝っ転がった。
はぁはぁ、と呼吸がかなり乱れている。
「遅いわよ!!タカシ!」
と、ニコは言った。
「そんなこと言ったって・・・こんなに走ったの・・・何ヶ月ぶりだろう・・・」
そう、年に一回あるかないか、のマラソン大会ぐらいでしか、こんなに走ることはない。
あのイベントが一番憂鬱なイベントと言っていいレベルだし・・・。
「はい、休憩したら、次は、リオンと組手よ!」
とニコが言った。
「組手・・・?」
走り過ぎて、はぁはぁ言ってる僕は、その言葉を聞き返した。
「そう、私と組手。接近戦の訓練」
とリオンが完結に説明した。
なるほど、まずはリオンのトレーニングに参加するということか。
さっきヒカルが全員のトレーニングをやってみて、得意不得意を知るという話をしていた。
個別訓練、第一弾ということだろう。
「やっと、回復してきた」
と言いながら、寝っ転がっていた姿勢を直し、立ち上がる。
しばらく寝っ転がっていたので、すこし体が楽になった。
走るのは、ほんと大変だ・・・。
「よし、いけるよ!」
と、なんとか回復した体を動かし、リオンに伝える。
「じゃ、はじめましょう!」
ニコが言うと、リオンは、挨拶の態勢に入った。
「おねがいします」
と、ペコリと頭を下げる背の低い少女リオン。
そう次の訓練が始まるのだ。
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