第二十一話『ヒカルとトレード』

「くれるの??」と僕に聞く。

「うん、僕が投げても敵に当てるのは難しいからね!得意な人に持っていて欲しい!」

と僕は、にっこり笑って言った。


「くれるなら欲しいけど!!ほんとにいいの?」

とヒカルは遠慮しがちにそう言った。


「いいんだよ!僕が投げても当たらないし」

と、笑った。合成して生み出した『速炎投擲 - ファイヤースロー』をヒカルにあげるという提案だ。僕が使うより、彼女の方がうまく使えるだろう。


「良かったね!私も『炎弾 - ファイヤーバレット』をもらったのよ!これのおかげで、少し離れている時にも戦える方法が増えたのよ!」

とニコがヒカルに説明する。


「なるほど、そうなのね!じゃぁ、お言葉に甘えて!」

お願いします!と手を出した。


この世界では、手を握ってスキル『技能交換 - スキルトレード』を発動すると、スキルを交換することができる。

なので、ヒカルはすっと腕を差し出した。白く綺麗な腕だ。


「代りに、『炎拳 - ファイヤーパンチ』をもらってもいい?」と僕は聞いた。彼女が、ゴブリンを倒した時に、手に入れていた事を思い出したからだ。


「え?また?『炎拳 - ファイヤーパンチ』集めるの?」

とニコが驚いて、聞いた。


すでに『炎拳 - ファイヤーパンチ』を2つニコからもらっている。

僕はその『炎拳 - ファイヤーパンチ』を2つを合成して『二重炎拳 - フレイムパンチ』作っていた。


「うん、もう一個試してみたいことがあるからね」

「ふーん」

とニコはその言葉を理解しようとしているようだった。


「もちろん、いいわよ!見ての通り私!接近戦闘、得意じゃないから!」

とメガネをぐっとあげて、ニコリと笑った。


そう、ヒカルは指揮官タイプ。

後方からの遠隔攻撃主体のタイプだ。

全体の動きを一歩下がって確認しながら、タイミングによって、投げ武器で攻撃を支援するタイプだ。


「じゃ、失礼して・・・」

とヒカルの両腕を掴む僕。

掴んだ瞬間僕の顔は少し赤くなったかもしれない。


「あ、イヤラシイこと考えてる!!」

とニコが僕にちゃちゃを入れる。


「考えてないから!!」

とニコ、に弁明する。


「え?考えてないの?それはそれでさみしいな!」

とヒカルは笑った。


「な!!ヒカル!!」

と、ヒカルの発言で顔を真っ赤にするニコ。


「ふふふ、ニコちゃんはわかりやすいなぁ!!」

と笑った。


「なんのことよ!!」

とニコが抗議する。


「さ、ニコはほっといて、行きましょう」

「オーケー」

と僕も同意した。


「ほっといてってなによ!!」

とニコがさらに抗議していたが、僕らはスキルを発動した。


『技能交換 - スキルトレード』


僕とヒカルの体が光に包まれる。

そして、すっと、その光は消えた。


「成功かな?スキル確認」

と僕が天の声に言う。


<<スキル合成 - シンセサイズ>>

<<二重炎拳 - フレイムパンチ>>

<<炎拳 - ファイヤーパンチ>>


「よし、来てるね!」

「私も来てる!」

僕とヒカルのトレードが完了した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る