奇談その四十三 僕の彼女は腐女子
卓司は専門学校に通うごく普通の男子。長い間、待ち望んでいた彼女が苦節五年でようやくできた。
しかもその女子は学校全体の男子の人気第二位と言われている、
名前は
「何でお前なんかと付き合う事にしたのかなあ」
親友の梶部に皮肉を言われた。
周囲の予想に反して卓司と麗華の交際は順調に進んだ。
そして卓司はどうして自分が麗華に選ばれたのか理解できるようになった。
麗華は俗に言う「腐女子」で、ボーイズラブの漫画や小説を愛する人物だったのだ。
(俺も漫画オタクと呼ばれて十五年だからなあ)
自宅の物置に天井まで高く積まれた大量の単行本があるのを思い出し、卓司は自嘲したが、そのお陰で麗華と付き合えるようになったのだから、人生何が幸いするかわからないとも思った。
交際を始めて半年が経った。奥手の卓司も流石に焦れていた。麗華がキスをさせてくれないのだ。
それどころか、顔を近づけるのも拒まれている。
一緒に食事に行ったり、遊園地でデートしたり、映画を観に行って夜遅くまで語り合ったりする事はあっても、キスはさせてくれなかった。
この前は卓司のアパートに来て、夕食を作ってくれた上、泊まっていったのだが、一緒に風呂にまで入ったのに、キスはさせてくれなかった。
(こうなったら、寝ている時にキスしてしまおう)
卓司は一計を案じて、また麗華をアパートに呼んだ。
楽しく夕食を摂り、風呂も一緒に入った。だが、キスはさせてくれなかった。
(深夜決行だ)
卓司は決意をし、ベッドで二人で寝た。そして、麗華が寝静まるのを待った。彼女は寝つきがいいので、すぐに可愛い寝息を立て始めた。
(よし!)
卓司は起き上がって麗華のしっとりとした唇に吸い付いた。
「ぐへえ!」
その瞬間、凄まじい異臭が口の中に流れ込んで来た。途端に麗華が目を覚ました。
「とうとう気づいてしまったのね。私は正真正銘の腐女子なのよ」
ニヤリとした麗華の口から、ドブのような臭いが漂ったと思った瞬間、卓司は首に噛み付かれていた。
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