ReviveGame
Mey
Revive Game
「ここまでだ!貴様の様な怪物には天誅を下してやる!」
まだ私が幼かった頃によく見ていたヒーローアニメ、いつも同じ展開で終わる。
ヒーローが怪物を倒して勝利してそんな展開に毎週友達と笑いあっていた。
でも、本当は私は嬉しくなかったんだ、ヒーローが勝利後のお決まりのポーズをする瞬間が1番嫌いだった。なぜなら私は倒されその命を散らした『 怪物』が好きだったのだから。
「ねぇ?心咲!」
「え、」
友達の萌々子が肩を叩かき、少し心配した口調で問いかけてきた。あれ?どうしたのかな。私、なにかした?
「えっと、どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ、またボーとしちゃってさ」
「あ、ごめんごめん!少し考え事だよ」
「考え事?、その頭で何考えても無理じゃない?」
遠回ししてるけど直訳でバカと言われた、さすがの私もすこしムッし頬を膨らます。そしてすぐさま反論
「酷いよー、私だって真面目に考える事ぐらいあるし!」
「じゃあ何考えてたの?」
「えっと…それは」
素直に言うか正直悩む、絶対馬鹿にされると思ったからだ。もう15歳なのに「ヒーローアニメ」の事を考えてたいたなんて言えない。
「げ、ゲームの事だよ!」
と適当に誤魔化す事にしました。バレないで下さい!
「顔、引きつってるわよ」
ビクっと体を動かしてしまいそうな程、直球なことを言われてしまった。昔からこうだ、隠し事が何も出来ないんです。はぁ…
「ま、いいわ信じてあげる。んでそのゲームってもしかしてあれの事?」
バスの中に貼られている、「ReviveGame」というスマホゲームのポスターの事を指さした。
「すごい、なんでわかったの?」
実際、私が誤魔化そうとして真っ先に思いついた言い訳がまさにそれだった。
「ネットで噂になってんじゃん、学校でもよく聞くしさ。」
「でも、私は嘘だと思うなぁ。あの噂」
「まぁね、信じられないよね。”ランク100になったら現実になる”なんてさ。」
半年ぐらい前だったかな、「ReviveGame」の噂が広まったのは。
「ReviveGame」とはプレイヤーが善と悪を選択肢しPvP形式で戦うというシンプルなゲームだ。最も特徴的な観点は、既に登録ユーザー数が数万人規模になっているというのに、悪を選んだユーザーは2割程しかいないという点であった。
理由はとても簡単なもので、ただ単に「悪に対してのデメリットが大きすぎる」事であった。しかし、メリットも存在すのだとか。
「みんな正義の味方を選びすぎなんだよー!もう、たまには悪の気持ちも考えてよ。もー!」
「てか、心咲やってるの?」
「えっ、あ…うん」
完全に墓穴を掘りました。はぁ、やってしまったよ。聞かれたく無い事を聞かれる前に話を変えなきゃ。
「その言い方、もしかして悪側なの?」
暫く何も言えず黙っていると、萌々子の方から話しかけてきた。
「心咲はさ、昔からそういうの好きだったもんね」
「うん、雫とかもやってるらしいんどけどさ」
私がため息を含みながら答えると、その心中を察したかの様に肩に手を乗せ一言。
「みんな善をえらんでるのね。」
噂になっている悪が極端に少ないというのは事実で私の周りの人たちが、オブラートに包んでも全員が善です。揺れるバスの車内で力が抜けたように下を向く。
「とほほ、悪が栄える日は来ないのかなぁ」
そんな小声を呟き、萌々子がため息を着くのと同時に通ってる学校の前に着きました。
午前の授業が終わり、昼闇の間にスマホを取り出して欠かさずゲームのチェックをするのが日常…って、これじゃあ
「彼氏もできないよなぁ」
「どーしったの?」
「うわぁぁあ!?」
後ろからいきなり肩に手を置かれ危うくスマホを落としそうになるほど、声を出して驚いてしまった。うぅ、恥かしい。
「おっと、ごめん」
「も〜、ビックしたな〜」
目の前で手を合わして中腰で謝る、このクラスの委員長である二宮雫だ。可愛くて、スタイルも良くて頭もいい、みんなの憧れ的な存在だ。もちろん私のでもあるんだけどね。
「どれどれ〜って!」
私のスマホを覗くようにしてみた雫は目を丸くして、立ち尽くしてしまった。理由は簡単、現在私のReviveGameにおけるランクは。
「99っ?!しかもあと少しで貯まるじゃん!」
「えへへ〜、凄いでしょー頑張ったんだよ?」
彼女が驚くのも無理はなかった、噂にあるようにReviveGameにおけるランク100とはある種のゴールのようなものでもあった。あくまでも噂が噂である理由はその難易度、特にランク上げに関するルールが厳しく100になった者は極僅かと言われているからだ。
「すごいじゃん心咲!しかも悪側でしょ?!」
「うん!すっごく嬉しい!」
朝のバスからヒーローについて考え事をしていたのはこの事が原因であった。もしも、噂が事実であれば私は今日、本物の『悪』になるんだから!
「夢が叶うかもしれないんだなぁ…まぁ、信じちゃいないけどね」
私がそう呟くやくと、雫は真面目な顔で私に言う。
「そんな事ないよ、願いは願い続ければいつか本物になる。ルールとか常識とかは見掛け倒しなんだよ。」
そう言うと彼女は笑いながら授業の予鈴のチャイムと共に席に戻って行った。
「見掛け倒し…」
帰りのバスの途中に萌々子が昼休みの事を話しかけてきた。
「あれ?なんで知ってるの?」
「なんでって、あれだけ大きな声で喋られたら嫌でも耳に入るわよ。」
「あはは、そんな大きな声で言ってるとは思わなくて」
大きな声でなくても雫と一緒にいれば自然と生徒の目線を集めてしまう事もあり、何人かに聞かれていたらしい。
「で見せてみてよ、ランク99!」
「えっ、あ、うん」
スマホでReviveGameを起動させ萌々子に見せる。感心したような顔でまじまじと画面を見つめていた。
「えっと、萌々子はこういうの興味ないんじゃなかったっけ?」
「あれ?言ってたなかったっけ?私もやってるのよ」
「えぇぇぇ?!そうなの?」
また大きな声を出してしまい、乗車している人達の目線が向き、すみませんすみませんと頭をさげる。またやっちゃった…
「ったく、少しは学習しなさい」
語尾を強くしながら頭に手を押し付けられ、いつも萌々子には迷惑を掛けてちゃってるなぁ。
「でも萌々子がやってるなんて意外」
「ま、気が向いたからやってるだけよ」
「ランクはいくつなの?」
気が向いたからと聞いたから、10、20程度かと思ったが以外にも42というも高ランカーだった。
「それ…気が向いたからっていうの?かなりやってる方じゃ」
「あんたには言わたくないわ」
私は胸を強く鼓動させながら自分が1番聞きたかった言葉を発した。きっと、萌々子なら…
「ねぇねぇ!陣営は?もちろん!」
「善よ」
すまし顔で言われた。それと同時にバスが停車しドアが開いた。
「うわぁぁぁぁぁ!萌々子のバカァ!」
私は猛烈ダッシュで走り消えていった。萌々子は額に手を乗せ、上を向く。
「あっちゃ、やりすぎた」
その手のスマホにはしっかりと『悪』の陣営のマークが刻まれていた。
家に着き、ベットに飛び込んだ私はブツブツと先程の文句を言っいる。
「なんだよ萌々子は少しぐらい優しく言ったっていいじゃんか、も〜!」
足をバタバタさせながらイライラを発散すると、気持ちを切り替えてランクアップだ。次でラストバトル!
「まぁ〜負けるよね〜、はぁ」
負けとは悪にとっては当たり前の事であった。まず圧倒的に善の方が装備もスキルもバフも強いのだ。そして、
「やった!ランク100だ!」
しかし、何も起こらない。いつも通りの画面だった。それに対しての先程の怒りも交わり私の堪忍袋の緒を限界だった!
「なによ!起こらないじゃん!」
と、思った瞬間…
『おめでとうございます!立花心咲様、貴方はこのゲームにおける第1条件をクリア致しました!』
「へ、クリア?」
唐突にスマホから謎のボイスが流れ始める。しかも軽く流したが私の本名を言っていたような気がする。
「第1条件ってなに?それになんで本名が?!」
『 安心してくださいユーザーのプライバシーに関しては完璧に守られています。』
「へっ、返事した!?」
会話が出来るはずのないゲームアプリのボイスが自分の声に反応し返答をしてきた。有り得ないのに。
『これから、改めて陣営を選んで頂きます。』
すると、スマホの画面に『善』と『悪』の二文字とそれぞれに鍵穴が空いていた。
『お好きな陣営と契約をお結び下さい。転生を行います。』
「でも、鍵なんて持ってないです」
『いえ、立花様の服の右ポケットの方に入っています。』
「え?」
恐る恐る手を入れてみると、そこには鍵が入っていた。丁度スマホに表示されている鍵穴に合いそうな物が。
「なんで…」
『では、契約をお願い致します。』
怖い、目の前で信じられない事が起きている。でも、噂は本当だった。なれんだ、自分の夢が叶うんだ。
「私は、悪と契約します!」
何も考えなかった、というより何も考えないようにしていたのだ。夢を叶えるという一つの目標を達成するために。
スマホの画面にまるで本物の鍵穴にさすように鍵が入る。そして、回した。「ガチャコン」という音がした瞬間、目の前を光が包み込んだ。
『承りました、立花心咲様あなたを第20使徒として契約致します。』
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