祐喜人との日々
詩月みれん
第1話 婚活パーティーにて
プロフィールの「今一番ほしいもの」欄には「TV番組クイズKINGに一緒に出演してくれる方(男性でもOK)!」とでかでかと書かれていた。
私は一瞬気を取られた後、まじまじとそのプロフィールを書いた本人を見つめた。
彼は、眼鏡の奥で微笑みながら悠然と座っていた。自信たっぷりの商品をプレゼンした直後のように。
あのー、これって、”婚活パーティー”ってやつですよね?
何この人、ふざけてるの? 結婚相手よりテレビに出る相方がほしいの?
プロフィールカードの「誠実」にチェックが入っていないのもなんだか納得出来た。
他の男性は結婚に対して真剣だし、こちらの話をがんがん引き出してくれて、こんな余裕かましてる人なんかいなかったのになぁ。
――そして私、氷ヶ浜静子は、この男性、石川祐喜人とカップリングすることになった。
だ、だってついていったら絶対面白そうじゃん……!
パーティーが終わってエレベーターに乗ると、同じ会場でカップリングしたばかりのほやほや男女が次々と乗り込んでくる。正直、私も初カップリングだったのでどぎまぎです!
そこで唐突にブザーが鳴るからビクゥ!となってしまった。恥ずかしい。
周りの人には私の挙動は気づかれなかったが、
「なんでまだ定員乗ってないのにブザー鳴るの?」と不思議そうな声が上がっていた。
それまで私の隣で黙っていた石川祐喜人がぽつりと言った。
「これは長くドアを開け過ぎていたからじゃないかな」
と。私達は、カップリングした後の高揚感でそんなことに気づいていなかった。
――そして。場の皆を納得させた一言を放った石川祐喜人が、私のカップリング相手だということが少し得意に思えていた。クイッと持ち上げた眼鏡、名探偵のようだった。
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