第4話 護衛依頼

「生徒会長さんでしたか・・・びっくりしちゃいました。」司は咄嗟に笑顔を貼り付け、距離を保ったまま生徒会長を見やる。

「日下部・・・」

「へ?」

「日下部 紫・・・それが私の名前・・・貴方には名前で呼んで欲しいのだけど?」 生徒会長はそう告げて可愛くウインクする。

司は、瞬時に思考する。隙を突かれて後ろを取られたが、その後の行動の意味がわからない・・・何故、自分に自己紹介をする必要がある?この人物との接点は何もない。そして、何よりも・・・隙だらけだ。この会話の間だけでも3回は殺せている。その点で、何処かの組織の諜報員でないことは確かだが・・・

「それで、生徒会長さんは僕に何のようですか?できれば要件は手短にお願いしたいのですが・・・」この後、アパート《アジト》の方にも行かなければいかない。あまり時間を掛けたくないと思う司は、急かすように言ってしまう。

一方、日下部 紫は困惑していた。容姿端麗、成績優秀。何よりもこの学園島の建設に携わっている日下部建設グループの社長の娘である自分に対して初対面であまり友好的でない対応をされたのはこれでだからだ。

「あの・・・えと・・・」

「要件はないのですね。それでは僕はこれで失礼させて頂きますね」

慌てた紫は、矢継ぎ早に質問をした。

「貴方、以前に千葉県の方に住んでいたことはない?」

何故か、紫は祈るような仕草すらしている。

「申し訳ありません。僕は合衆国ステイツ出身です。その地方には住んだことはありません。」

「そう・・・ですか・・・不躾な質問、ごめんなさい・・・」

希望を打ち砕かれたような表情をする紫に、心がチクリと痛む司。

「そんな顔しないでください・・・僕まで悲しくなっちゃいます。」

そう言って、司は紫の手を取り握らせる。

紫は不思議そうに手を広げてみるとそこには、一粒のニッキ飴だった。

「ああ・・・・これって・・・」

見上げると司は、歩き出していた。紫はその背中に熱の篭った視線を送り続けた。

日下部 紫  一度目の恋と全く同じ方法で恋に落ちた瞬間であった。



学園島 商業地区  喫茶店 『イーハトーブ』

窓際の席で、司はホットコーヒーを飲んでいた。待ち合わせ10分前だが、時間前行動を体に刻み込まれているので自然と待つがわになるのだ。

「お待たせ・・・司。」年の頃は二十歳前だろうか?綺麗というか可愛い系の金髪美人が、司の向かいの席に座り話掛ける。

「さて・・・仕事の話も兼ねてだけど改めてね。スベェル財団 オールセキュリティ部門 守護者ガーディアン2『アンノン』担当のサポーター ミシェル・クルセイド よろしくね。物資とか、事前情報・・・スベェル財団からの連絡等は私が行うわ。そ・れ・と・私が貴方の保護者兼義理の姉ということになってるから♥」

ものすごくいい笑顔でミシェルは言ってくる。

「へぇ~というか、ミシェル良く入れたね?戦闘Lv C-なのに?」

本当に不思議そうに司が尋ねると

「ふふふ・・・お父さんと、あなたの名前使っちゃった。(ゝω・) テヘペロ」

「ああ・・・」と呟き、額に手をやる司。

「と、久しぶりの私の可愛い弟分との会話はちょい終了して・・・ここからの話」

「4月15日 学園島国際会場にて、イギリス・日本合同で新薬の発表があるの。

イギリスからは、若き天才と言われるアイシャ・ゴールドマンが来日する予定よ。

日本からは、宵森 縁特別教授が来場する予定だわ。

貴方には、前日から、アイシャ・ゴールドマンと宵森 縁の護衛をお願いしたいの・・・」

まさか、今日知り合ったクラスメートの名前がでるとは思わなかった司は大いに驚いた。それに一つ疑問が浮上する。

「ミシェル姉・・・二人の護衛?イギリス側からは期待できないの?」

ミシェルはその質問に渋い顔で答える。

「今回、発表されるのは新薬なんだけど・・・配合を変えると軍事転用できるらしいのよ・・・らしいというのはまだ未確認情報なんだけどね。それでその情報を漏洩リークしたのがイギリス側らしいのよ・・・イギリス側からもSPは出るらしいけど、正直守るつもりはないわね。」

「それに狙ってる組織っていうのが・・・巨大軍事産業クルセイドの傘下組織 カドケゥスよ・・・」



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