狙撃手は、硝煙の向こうに何を見るのか?

水無月 獅堂

第1話プロローグ

夜の雑居のビル屋上。一人の少女がヴァイオリンケースを持ってある一点を見つめていた。夜の雑居ビルの屋上に少女が一人というのも異様だが、少女の服装がより異様さを醸し出している。白いゴシックロリータドレス。所謂ゴスロリ。これでこの場違いな少女の異様さはおわかりいただけるだろうか。

少女はヴァイオリンケースを開けて、を組み立てていく。

組み立てられるは、少女にのみ与えられた銃。チェイタックM200異能制御マギカカスタム少女が最強たる由縁の銃である。

少女は、銃を構え、スコープを覗く。スコープに映るのは高そうなスーツを着た初老の男。この界隈の夜の元締めと言われる男である。今回のターゲットはこの男である。

銃を構えたまま数分・・・少女のインカムに通信が入る。

「なんで、その服をチョイスするかな?不明アンノン?」

「え?女の子になるなるなら、この格好だと服飾屋デザイナー

が・・・違うの?」

可愛く小首を傾げながらの声で聞き返す。

「はぁ・・・まぁいいや・・・それじゃ始めるぞ?3・・・2・・・1・・・ミッションスタート」

その声と同時にスコープで覗く男のいる部屋の灯りが全て消える。

消音サイレンス・・・加速アクセル・・・ターゲットロック・・・エイメン・・・」

その言葉を言うと同時にチェイタックの引き金を引く。

弾丸は一瞬にして窓ガラスを貫通してターゲットの頭に命中・・・男は1mくらい吹っ飛ばされて倒れた。不思議なことに少女の持つ銃は銃声を発しなかった。


少女はチェイタックを分解、ヴァイオリンケースにしまい、その場を後にする。

少女が、去ったきっかり30秒後、銃撃された男の部屋の照明が復活し男を確認しにきた部下らしい人物が大慌てで何処かに電話を掛けていた。

雑居ビルの男子トイレの個室。少女はゴスロリ服を脱ぎ、Yシャツにジーンズに着替えていた。この格好だと男の子に見えなくもない・・・

雑居ビルを後にして、スマホで電話を掛ける少女。相手は先程インカムで話した男だ。

「依頼完了したよ。伝言屋メッセンジャーいつもの所に振り込んでおいてね?」

「相変わらず見事だな不明アンノン銃撃したにも関わらず一切の音すらしねぇ。了解だ。いつものようにやっておくさ。で・・・今日は寄らないのか?」

「寄りたいのは山々なんだけど・・・明日、入学式なんだよね・・・遠慮しておくよ・・・」

「そうか・・・それじゃ、しょうがないな・・・明日からボロだすんじゃねえぞ?

 

「うん・・・わかってるよ・・・・僕は ・・・ヘマはしないよ・・・」

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