第7話
「みんな俺から離れていっちゃいそうで。お願い、嫌いにならないで。」
種田はそう言って、強く私を抱きしめた。
あの日から。何度か種田の家に来た。
ただただ行為におよんでいた。
楽しかった。やめられなかった。
そしてある日、心の痛みに気づいた。
友人に話せば、やめたほうがいい、いますぐ関係を終わらせたほうがいい、と言われた。
当然だよな、と思った。
心優しい友人は、何度も何度も何度もそう諭してくれた。
その度に隠してきた心の奥の叫びが聞こえた。
私は辛いのだ。
なんどか別れを切り出したことはあった。
「もう終わりにしようか」
「うん。ごめんな。」
「元彼のこと忘れられたからよかった。」
「こっちも楽しかったよ。」
そんな会話の数日後には、寂しいと連絡がはいった。それを拒む余裕など私にはなかった。
「ごめん。」
「なんで。」
「こんな私のことでもね、信じてくれる人がいるの。こんな私のことね応援してくれる人がいるの。何一つ隠さず話してもね、そばにいてくれる人がいるの。」
「うん。」
「もうその人達をがっかりさせたくない。」
泣きながらそう話した。
俺が寂しいから、関係を切りたくない。
結衣の気持ちなんて考えてない。
身勝手でごめんな。
そんなあまりに無責任な言葉に繋ぎとめられ続ける日々。
浮気が苦しいものであると、初めて知った。
高校時代、彼女持ちの男と付き合っているという女子をみて、信じられないと思っていた。
彼女とうまくいかないって相談受けててさ、まずいなって思ったんだよ、でもやっぱこっちにきちゃったよね。
そう笑う彼女のことが理解できなかった。
きちゃった、なんて言い方。嫌だったんなら断れば良かったじゃないか。
大変だね、と苦笑しながら聞くその心でそう思っていた。
実際なってみてわかった。
私だって苦しいのだ。苦しくて何度も何度も悩むけれど、切れないのだ。
彼女だって苦しんでいたのだろy、誰にも理解されなかったとしても。
そのことに気づいたころにはもう抜け出せなくなっていた。
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