腥きもの埋もれけり雪の中

 なまぐさきものもれけりゆきなか


 わたしは冬場に生まれたこともあってか今のところ夏より冬のほうが好きだ。冬は、ヒトを含めた多くの生き物が眠りに就いたようにおとなしくなり、しずかで水も空気もきれいで夜空がすばらしくきれいだ。夏より冬のほうがきれいな花が多いような気がするのはわたしの欲目か。


 あるとき生ゴミが雪に埋もれているのを見て、まっしろな雪がちりあくたさえも浄化するかのような印象を受けた。冬の訪れをよろこぶ気分がそこにあったと思う。


 句を作った当初、下五しもご(五七五の後ろのほうの五)を「雪の中」にするか「雪の下」にするかで迷ったが、「雪の下」にすると植物のユキノシタとまぎらわしい。さらに「雪の下」とするとイントネーションが平板になって、そのこと自体は俳句の王道といった感をわたしに与えるが、今回は「雪の中」としたほうがイントネーションに変化が生じ余韻が生まれてよいかと判断した。

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