常盤木はいづれと問へば夏の声

 常盤木ときはぎはいづれとへばなつこゑ


「常盤木」は常緑樹のこと。


「秋の声」という季語はあるが、「春の声」「夏の声」「冬の声」という季語はないらしい。


 わたしはあまり草木のことに詳しくないので、夏場に青葉をつけている木々を見てどれが落葉樹でどれが常緑樹かということが全然わからない。それが少々恥ずかしい。


 わたしは、俳諧師はいかいし(俳人)の中では与謝蕪村という江戸時代の人が特に好きで、好きな作品はたくさんあるがその中のひとつに「春惜しむ人やえのきにかくれけり」というものがある。見てのとおり「榎」は夏の木と書く。よく知らないが榎は大木になるのではないかと想像する。春のことを「春惜しむ人」と擬人化し、それが夏の木たる「榎」にかくれることをもって夏の訪れを象徴的に表現してみせたのではないか、とわたしは思う。わたしもそのように季節を擬人化してみたいと思ったので、そのような季語が存在しないらしいにもかかわらず、人の肉体を想起させる「夏の声」という言い回しをしてみた。

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