第19話 青の抹消編⑤ 狼の咆哮
―――――2年前―――――
「はぁ……はぁ……ちくしょう…」
「いい加減諦めろ。お前に俺は倒せねぇよ」
石川智樹は単身で
そんな智樹の無謀で身勝手な挑戦にも決して拒否はしない鷹山も今日の彼には呆れていた。顔は腫れあがり意識も朦朧としているが、頑なに敗北を認めず鷹山が帰るのを許さない智樹の執念深さを。
始まってから1時間以上が経ったこの戦いはほぼ終わっている。ダウンした智樹が数十秒の間隔を置いて立ち上がり鷹山にパンチを繰り出すがあっさりいなされて代わりに鷹山の拳が智樹の顔面や腹部に炸裂しダウン、このループがもう30分は続いている。戦いは明らかな泥仕合。
「
「……そんなこと、考えちゃいねぇよ……俺は…正義の味方なんかじゃねぇからよ。俺はただ…お前のすかしたゴリラ
「お前…誰かに脅されてるだろ?人質でもとられたか」
「何…言ってんだよ…」
「普段のお前は無鉄砲だが引き際は
「うるせぇ……。まだ決着はついてねぇ」
「言ってる場合じゃねぇだろ。さっさと案内しろ、どうせ近くにいるんだろ?」
「鷹山……」
「まったく…世話が焼ける1匹狼だな」
鷹山は智樹の肩を担ぎながら歩きだした。
―――――回想終了―――――
時刻は11時30分を過ぎた。東条はまだ『
ちくしょう……自分の無力さが憎い……!
「
「今さら何言ってんだ。お前が仕掛けたゲームだろうが」
「俺はさっき勝敗に関わらず天道は開放すると言ったんだぞ。お前が敗北を認めてここから去ってくれれば30分後には奴は家に帰れるんだ。今のお前が
「そんな口約束誰が信用するんだよ!?お前らが天道に変ないちゃもんつけて、ここに監禁したのは紛れもない事実だ!こんなゴミ溜めみたいな所でコソコソたむろしてるクズだろうがよお前らは!今更情けなんかかけてきやがって、胸糞わりぃんだよ!」
「オイオイ、そんな言い方はないだろ。俺とお前はいっぱい喧嘩もしたけどよぉ…」
「うるせぇ!!お前らの戯言なんざ聞くかよアホが!!グループ同士の抗争だの戦争だの、勝手にやってろ!俺はさっさと仲間を助けて2度とこんな所には来ない……2度と過ちは繰り返さない……お前の
「
気を引き締めろ……奴の口車に乗せられるな……。俺が負けを認めて帰ったら天道はこいつらにボロボロにされるかもしれない。引きずりまわされた挙句、電柱にでも吊るされて『
ぐだぐだ考えても仕方ない。攻める……!!
右手を振りかぶりながら鷹山に向かって駆け出す。だが本命は右手の握りこぶしじゃなくてこっそりポケットに仕込んでおいた野球ボール。鷹山との距離が2mほどになった地点で左手でボールをスイング。これで不意をつけるはず……。
だがその動きを予期していたように鷹山はあっさりと左手でボールをキャッチしてがら空きだった俺の右腹部に蹴りを入れる。
「くぅっ…」
「ずいぶん情けない声で鳴くじゃないか、
蹴りを入れられてよろめいた俺にすかさず鷹山の蹴りが繰り出される。今度は顔面にクリーンヒット。そして先ほどキャッチした野球ボールを俺の口にぶつける。
「~~~っ!!!」
歯に激痛が走る……うまく口が開けられない……。
おそらく前歯の何本かは折れている。だがこのままやられっぱなしじゃ終われねぇ…!
「あああああ!!!!!」
やや前のめりの姿勢から鷹山の下腹部に頭突き!思わぬ奇襲に鷹山の体勢が崩れる。しめた!今度は奴の後頭部をめがけて両手を重ねてハンマーのように振り下ろす。これが上手く決まって鷹山の巨体が地面に突っ伏した。よし!勝てる!!
勝利を確信したのもつかの間、鷹山は背筋ですぐに姿勢を戻して立ち上がる。
「がっかりしたぜ
「そりゃあ…しばらく荒っぽいことなんかしてないからな」
「諦めな
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