第27話お母さん! ゴーレムマンションに行くよ!

_____「ゴーレムの森入口」______


「こ... ...。これは一体どういうこと!?」


 移動するというので花瓶に水を注ぐように簡単にセバスをヒョイと馬に変え、シルフはセバスに跨り、森の入り口までくると普段は人が寄り付かない森の前に既に50人以上の住民が集まり、列を作っている。


「あ! 王女様だ!」


 シルフの存在に気が付いた少女が名を呼び、指さすと近くにいた母親は強引に指した指を下げさせ、シルフに「も・申し訳ございません!!!」と大声を上げて謝罪。

 その声に反応して、近くにいた住人達もざわつき、道を空ける。

 当然、年端も行かぬ小娘にそのような態度をしなければならないのだ、住民の中には不機嫌そうな表情を浮かべる者もいた。


「顔にでてるわよ... ...(小声)」


「何か言いましたか? シルフ様?」


「... ...何も」


 最前列で馬(セバス)を止めるとゴーレムが少し改造されたゴーレムスーツに跨り、住人達を誘導整理している。


「うわ... ...。何あれ... ...。気持ち悪い」


 改造されたゴーレムスーツはボディーの岩石がピンク色に塗られ、痛車のような風貌をしており、耐性がなかったシルフはドン引きしていた。


「え~。皆さま... ...。本日はお集まりいただきありがとうございます。みそ。今日は分譲マンションのご見学会です。ごゆっくりご覧下さいみそ。本日、ご案内を務めさせていただくゴーレムです。みそ。」


 ゴーレムはカンペを見ながら説明。

 「みそ」という独特な方言を言わないように矯正したにも関わらず、どうしてもそれが抜けないゴーレムはいつになく焦った様子だ。


「久々にゴーレムの方言聞いたわ。語尾の『みそ』に気が散って全然内容が頭に入らなかったわ... ...」


 シルフのちくりとする一言が気になったのか、ゴーレムはシルフの方を見やる。


「ご・ごめんみそ... ...。あれ? もしかして、シルフ様みそ!?」


「ええ、そうよ。」


 シルフの登場もあって、スーツのままだと失礼だと思ったのか、ゴーレムはスーツを脱ぎ捨て、シルフの前に登場。

 登場したのは何故か大人の姿のゴーレムではなく、身長130㎝くらいのツルペタ短足の幼女。


「お・お久しぶりみそ!! 私の事覚えてるみそ??」


 面識があったのか、ゴーレム幼女は白いワンピースの端を持って、頬を赤らめるが、シルフからは。


「ごめんね。覚えてないわ」と_____。


「そ、そうかみそ... ...。お父さんと一緒にお城の補修に行った時にシルフ様とお喋りしたみそ」


「あたしに同じ事を二度言わせるの?? 早く、目的地に案内しなさい」


「ご・ごめんなさいみそ... ...」


 ゴーレム幼女にとっては楽しい記憶だったのだが、シルフにとっては覚えのない記憶であったようだ。

 住民達にはその高圧的な物言いを快く思っていなかった者も沢山いたのだろう。「言い過ぎじゃないか?」「あんな言い方はないだろう」とした声がシルフの耳に入る。


「... ...」


 シルフの耳にそれらの言葉は届いていたが無視。

 先を歩き出すゴーレム幼女に付いていくように馬であるセバスの腹をトン... ...。と蹴る。

 いつもよりも力のない蹴りを受け、セバスは下を向き、トボトボと歩き出した。

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