第25話お母さん! 異世界に水洗トイレを作る!⑧完
______ゴーレムの城______
目が覚めると待ちに待った音が室内に響き渡る。
いつもは憂鬱な音だが今回は違う。
俺が部屋の扉を開くと同時に魔法少女と魔法婆とゴーレムも部屋から出てきて、顔を合わせ満面の笑みを浮かべて屋上に駆ける。
「ほら! 見て見て! ちゃんと水が溜まってるみそ!」
「おー!」
「おー!」
「こりゃ、見事だね!」
ぴっちりとしたコーティングは懸念されていた水漏れの心配もなさそう。
25mプールには半分ほどの水が溜まっていた。
「よし! 便所を見に行くか!」
三人を引き連れ、室内にある水洗トイレの様子を見に行く。
木製建具は江戸時代の
掴みやすいように取っ手は丸型を採用した。
まず、一番最初に試すのは誰が良いか決めようと思い、皆の顔を見ると三人とも黙って頷く。
「... ...みんな」
どうやら、俺が一番手のようだ。
俺はほぼ何もやっていない。
みんなの尽力がなければ達成出来なかったプロジェクト。
「責任者のあんたが一番初めに試さないでどうする」
魔法婆は粋な言葉を俺にかけて微笑む。
「ああ。そうだな」
俺は宇宙飛行士のように格好つけ、便所のドアを閉める。
そして、異様な威圧感を出す便器の前に立ち対峙。
ズボンを下ろしケツを便座にロック。
少しヒヤッとしたが、声は出せない。
ドアの向こうには女たちがいる。
みっともない声なんか出せない。
そして、俺は踏ん張りを開始する。
□ □ □
◆ ◆ ◆
数分後。
______ぽちゃん。
母なる海に生命が生まれた時はこんな音がしたのだろうか。
包まれる神秘的な音に扉の前で祈ってた女たちは歓喜の声を上げる。
しかし、魔法婆がそれを制止。
「______!?」
扉が開くまで油断するな!!!
と言わんばかりの形相。
それを見て、女たちは我に返った。
花島が無事に帰還するまで喜ぶ事は出来ない。
記憶を喪失しており、ケツにキスをされた事は覚えていないはずだが、魔法少女は悔しそうに唇を噛みしめていた。
______きいっ。
木製建具特有の甲高い音がし、花島が帰還。
彼の表情から成功か否かを判断するのは難しい。
女達は花島からの言葉を待つ。
そして、花島は「ふうっ」と一息ついてから。
「戻ってきたぜ。無事、完成だ!」
女たちは花島を称え、花島は目に熱いモノを溜めた。
紆余曲折あったがついに完成!
異世界初の水洗トイレが!
そして、魔法少女が次はあたし!
と言わんばかりにトイレに駆け込む。
このプロジェクトで一番苦労したのは魔法少女で水洗トイレを作るキッカケにもなった人物。
影の功労者とも言える。
口には決して出さなかったが、花島の心には魔法少女に対する感謝の気持ちと贖罪にも似た思いが混在していた。
だが、それも魔法少女の笑顔を見れば解決するだろう。
花島は再び、目頭を抑える。
ガチャ。
魔法少女は便所に入ってすぐに出て来る。用を足すにはあまりに短い時間。
あれ? 早くね?
と花島がそんな顔した瞬間、魔法少女の鉄拳が花島の腹部を直撃。
「てめえ! うんこ流し忘れてんじゃねえか!!!」
「ぶへえら!!!」
いくら水洗トイレ作っても流し忘れちゃ意味がない。
花島は身をもって、女達にもそれを忠告。
その後、便所には「流しましょう」のポスターがひっそりと貼られたのだった。
水洗トイレの章 完
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