第9話お母さん! 家出しました!
___ゴーレムの森___
勢いよくゴーレム幼女様の家を飛び出したは良いが寒さで体が震える。
一応、ゴーレム幼女様が部屋着として着用しているオオカミのような獣の毛皮を勝手に持ってきたが何分、幼女用のサイズなのでダンディーな男のようには着こなせず、膝から下は肌が露出してまるで露出狂のような格好。
んぎゃああ!
あーんむ! あーんむ!
じいいいじいいいい!
「______!?」
この森は危険な生物などがうようよいる。
ゴーレム幼女様が取ってくる食料は料理にすると美味しいが、見た目は恐ろしいものばかりだ。
ゴーレム幼女様は素手でこいつらを捕獲しているというがどう見ても普通の人間が素手で相手に出来る相手ではない。
ビビりな俺は料理の準備だけをして料理はゴーレム幼女様が行う。
ちなみに料理をすると言っても想像している可愛らしい感じではない。
動いている食料の首を絞めて気絶させ、包丁で首をはねて、鍋に入れて終わり。
血抜なども一切しない、とても豪快な調理。
3分クッキングならぬ3秒クッキングなのだ。
そして、ゴーレム幼女様は料理は3秒で終わらせるくせに皿のチョイスや盛り付けに30分ほどかかる。
本人はこれが一日の楽しみだと語っていた。
ぐう~。
料理の事を考えていたら案の定、腹の虫が鳴き出した。
そういえば、晩飯を食べる前に出てきてしまったからな... ...。
「そうだ、腹も減ったし帰ろう」
家出から30分。帰宅を決意。
この意思の弱さが職を転々とする理由になったのだろう。
後ろを振り返り来た道を戻ろうとする。
「あれ? 此処どこだっけ?」
歩いてる途中に目印などを付けておけば良かったのに、ゴーレム幼女様への怒りで何も考えていなかった。
帰宅が出来ない事が脳裏によぎった瞬間に不安と恐怖の感情が込み上げてくる。
少しの風や物音にも反応してしまい、全身が寒さとは違う震え方をしてしまう。
「うぁぁぁぁ!」
27歳にもなって不安で泣いてしまった。
異世界に来た当初は半ば、強気だったが、ゴーレム幼女様と生活するうちに緊張は解け、また、弱気な自分に戻ってしまっていたようだ。
「帰りたい! 帰りたいよ!!!!」
正に後悔先に立たずとはこの事。
身から出た錆と言ってしまえばそれに尽きる。
肌に黄色の塗装がされていたら、それが剝がれるほどに俺は大声を上げて泣いた。
ガサガサ!
「うわ~! やだよ~! 死にたくない!」
こんなに大声を出したのだ。
獣が寄ってくる理由としては申し分ない。
着ていた毛皮で全身を包み、そのまま、俺は丸くなった。
しかし、一向に獣が襲ってくる気配はない。
恐る恐る、音のした方向を見ると一人の老婆が草むらを背にして立っている。
「あ! おばあちゃんだ!」
夜の森に見知らぬ老婆が立っていたら、それはそれで、恐怖だが、獣が出てくると思っていた俺には天からの恵___老婆だった。
「ねえ! おばあちゃん! お願い助けてよ! 道に迷ったんだ!」
「... ...」
老婆に話かけても反応がない。
俺は根気強く老婆に話しかけるが。
「ねえ! 困っているんだ! おばあちゃんの家でかくまってよ!」
「... ...」
最初から馴れ馴れしかったのかな?
俺は老婆に媚びを売るようにして。
「ねえ! お姉さん! 僕、迷子になっちゃって! お願いします! 助けてください!」
すると、作戦が功を奏したのか、老婆が動き出した。
やった! これで、助かる!
そう僥倖の光が見えたのは束の間、老婆の後ろからクマのような大きい生物が老婆の背中に噛み付いた状態で草むらからのそり。
「うわ~! お婆さん食べられてる!」
俺は尻餅をつきその場で失禁した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます