【第一章】ゴーレム幼女と魔法使い
第3話お母さん! ゴーレムって割と身長が小さい!
___ゴーレムの森___
そして、時は戻り、ゴーレムの森。
子持ちししゃものように棒に括りつけられている俺。
可憐な美女にこのようなぞんざいな扱いを受けるのはいいが、目の前にはTHE男といった風貌をした兵士二人。
これではご褒美どころか罰ゲームだ。
「俺、これからどうなるんだ?」
「... ...」
「... ...」
「答えてくれたっていいじゃねえか。雑談って大事よ」
「... ...」
「... ...」
彼等の勤勉さには脱帽する。
余計な話はしない。
正に兵士の鏡だね。
兵士の姿に感嘆の声を上げていると、ドサッと土嚢を下ろすように乱雑に地面に背中から落とされ。
「うわああああああ!!! もう、嫌だ! 俺、帰る!」
悲鳴を上げて逃げ出す兵士。
「ま・待ってくれよおおおお!!!」
それに追従するもう一人の兵士。
ああ。こんなへっぴり腰じゃダメ。
訂正。さっきの賛辞は取り消しだ。
視界は先程まで明るく、周囲の状況を見る事が出来たのだが、今は月が帽子を被り、真っ暗闇の中では辺りの状況を窺う事が困難となってしまった。
見知らぬ土地で取り残され、凄く心細い。
このままでは寂しさと不安で心肺停止してしまう。
「うあああ!!! お母さん!!!」
気が付くと俺は幼子のように母を呼んでいた。
お母さんとオッパイという言葉には人の心を落ち着かせる効果があると昔、近所で猫をいっぱい飼っていたオジサンが言っていたのでやってみた。
... ...ドン。
背中を預けている地面から微弱な振動が伝わる。
「ん? 地震か?」
... ...ドン!
今度は更に強い衝撃が。
これは今まで経験した地震の感覚ではない。まるで大地を揺らす程の大きな者が迫ってくるようなそんな恐ろしい振動。
段々と音が強まるとともに背中に伝わる振動が大きくなる。
俺は一度、死を覚悟した身だ。
恐怖はない。
いや、うそだ少しある!
__ドシン!!!!
何か大きなものが俺の背中の後ろでピタリと止まる。
そういえば、先程、ゴーレムがなんちゃらと言っていた気が... ...。
って事は... ...。
恐る恐る、後ろを振り返ると赤い目をした人型の岩石の化物が地面に転がる俺をジッと見ている。
ボディーにはゴツゴツした岩石が何枚も貼られていて、岩石のタイルで人型にかたどった恐ろしいビジュアル... ...。
なのだが、もう少し、目の前の対象物に身長があれば俺は泣き叫んでいただろう。
「いや! ちっさ! B級遊園地のマスコットかよ!」
その岩石の怪物は体長が1m程しかなく、まるで、幼稚園で行うお遊戯会の衣装レベル。
「... ...」
的確なツッコミを入れる俺にぐうの音も出ないのか、ゴーレムはだんまり。
「損した! 焦って損した!」
「... ...」
バタバタと足を動かせる俺。
そして、ゴーレムは何も言わずにおもむろに俺を持ち上げ、まるで、お姫様抱っこのような態勢。
両手両足を縛られており、動くと腕がうっ血するため抵抗することを早々に諦める。
先の死よりも目の前の手の痛みを優先する俺はゆとり教育の賜物。
「なー。お前、俺を食うのか?」
「... ...」
「お前、口どこにあるの?」
「... ...」
先ほどの兵士のように問いかけても返ってこない言葉。
そこで、俺はもう一つの不安に駆られる。
... ...俺って、嫌われてるのかな?
こう見えて、人の評価というものが気になる俺は岩石の腕の中でうな垂れた。
__ドシン!
巨神兵かよ。と思う程にドシドシうるさかったゴーレムの足音が突然止まり、目の前には山をくり抜いて作った洞窟の入り口のようなものが。
洞窟の入り口からは風の音が漏れ、怪物の声のようなおどろおどろしい風切り音を上げている。
それはまるで、地獄の入り口のようで俺の股間も一気に縮こまった。
__ドシン! ドシン!
洞窟に侵入するゴーレム。
ここは恐らく、ゴーレムの巣に違いない。
ここで俺は死ぬのか... ...。
異世界に来て、俺は三度目の死を悟った。
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