どうしてかしら?



 いつもの場所で逢いましょう?

 今でこそそんなことが言えるけれど、最初のデートは散々だった。

 二人、別々の銅像の前でモンモンと待ち続け、お互いを責めて、笑った――

 笑えてよかった。だから今もこうしていられる。


 あなたの腕をとって、歩きはじめる。きっとこれが私の精一杯。

 キスなんてしたことない。応じられない。

 顔が熱くなって、下を向いていると、ふいに頬にやさしいぬくもりが。

 降ってわいた幸福に、ただ驚いて。あなたの顔を見れずに駅の階段かけのぼった。


 それからあなたは触れてこなくなった。

「キスしていい?」「手、つないでもいい?」

 そんなふうに承諾を求めて距離をつくる。

 だめじゃないの! 中学生じゃあないのよ、私!

 だけど、あれが初めてだったから。


 少しためらうけれど、今度はいいよって言おうかな。

 照れちゃってだめ。

 頬がポーッとしちゃう。

 キスくらいでなによ! ……そういえばあなたは慣れた風だった。


 知らないオンナノコと一緒のプリクラ、手帳にいっぱい!

 見せてくれるのはいいけど、私にどうしろっていうの?

 ヤキモチ焼いたらいいの? 嫉妬したらいいの? それともモテるのねって言えばいいの?

 愛を試すなら、私はきっぱり別れる。


 あなたを知る前なら、きっと可能だわ。

 あなたのお友達を紹介される前なら、できる。

 あなたのご両親に引き合わされる前なら、まだ平気。

 だけどあなたの部屋へ行ったときだったんだもの!

 もう引き返せない。なあなあにできない。破局よ!


「あ、これ妹の手帳だった」


 何故かしら。しゃっくりが出たわ。



               END

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