短編小説『骨まで美し』

川住河住

 私の大好きな人は死にました。

 もうこの世のどこにも彼女の居場所はありません。


 あの人がいなくなって半年が過ぎようとしています。


 窓から見える景色は、随分秋らしくなってきました。


 ここは使われていない旧校舎の教室。


 かろうじて電気は通っていますが、壊されるのも時間の問題でしょう。


 まあ、私としては好都合です。


 しかしここは、私とあの人にとって大切な場所です。


 二人の思い出の場所です。なくなってしまうのは、少し寂しいです。


 私は携帯電話を操作して、カメラ機能で撮影した先輩の最期の姿を眺めます。


 もう何度見たか分かりません。


 それでもこれは、私にとって最高の写真です。

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