第3話
キーンコーンカーンコーン
「それでは、今日の授業はここまでです」
チャイムが鳴り、先生が教室から出ていった。
「
私の前の席に座ってる
「早苗、今日は食堂?」
「うん、食堂。遊里も?」
「そうだよ。じゃあ行こっか」
席を立ち、食堂へ向かう私と早苗。早苗とは一年の最初に席が前後だったことと、2人とも外部から入学してきたことで仲良くなった。私が通う高校は幼稚園から高校まで一貫の女子校で、ほとんどが内部進学組なのだ。いわゆるお嬢様学校に放り込まれた庶民2人。そりゃ仲良くなるってもんよ。
「今日は何食べようかな~」
「どうせ早苗はいつものうどんでしょ」
「いつものじゃないよ、かきあげとかきつねとか色々食べてるよ」
「いや、それ具の話でしょ。うどんばっかり食べてるからちっちゃいのよ早苗は」
早苗は身長149cmのちびっこだ。うどんばっかり食べてるから説を推してる私。
「……そうだね~、いっぱい食べても胸にばっかり栄養いっちゃうみたいで困るんだよね~」
「くっ……」
「いや~、スレンダーな遊里さんが羨ましいな~」
早苗はちびっこなんだけど、巨乳なのだ。ちびっこボディにEカップ。なかなかマニア受けしそうだな、と思う。さすがに言ってないけど。対して私はぺったんこのAカップ。ちょっと分けて欲しい。身長ちょっと持ってってもいいから。ほんとに。
「あ~、結構混んでるね」
「いつも月曜日は混んでる気がするね。あ、あそこ向かい合わせに空いてる」
食堂で案の定きつねうどんを頼んだ早苗と、定食を頼んだ私は席を探していた。うちの学校の食堂はそんなに広くないので、お昼の時間はいっぱいである。あんまり広くないっていうのは、お弁当持参の子が多いからなんだろうか。
「もうちょっと広くしてくれてもいいのにね~、この食堂」
「ほんとほんと。座れなかったらどうしたらいいんだろね」
長机の空いてる席に向かい合わせに座る私たち。
「いただきます」
「いただきます」
お箸をパチンッと割ってさっそく定食を食べる。育ち盛りの高校生である私はこの時間は毎日お腹ペコペコ。さすがに早弁はしてないので、我慢してるだけ褒めて欲しい。
「そういえば、遊里はまだあのバイトしてるの~?」
「うん、してるよ。おじさんのとこのカードショップ」
「なんか珍しいところでしてるよね~、普通カフェとかファーストフードじゃない?」
「まあそうなんだろうけど、楽だしね。それに全然知らない世界に入ってみるのって面白いよ」
私はバイト始めるまではカードゲームなんて全くやったことなかったけど、やり始めてみたら意外と面白くて、バイト以外にもネットゲームなんかでやってしまうぐらいハマってるから、何でもやってみるのは良いんじゃないかなーと思ってる。
「そうなんだ~。なんかカードショップっていうと変な人多そうなイメージもあるんだけど」
「別にそんなこともないよ。他のお店でも変な人はいるだろうしあんまり変わらないんじゃない」
「まあ、それはそうかもね~」
「そうそう、昨日なんてとびきり可愛い子が来てびっくりしたよ」
「へ~、珍しいね。遊里のお店ってあんまり女の子来そうじゃないのに」
その通り。女の子が来るとしたら大体彼氏の付き添いである。
……もしかして四宮さんも彼氏の影響とかで始めようとしたのかな?ネットで見てって言ってたけど、それだけで始めるのはなんか珍しい気がする。
「そうだね、女の子自体珍しいのに、同い年ぐらいの女の子が来るなんてね。しかも可愛い黒髪美少女で、お姉さん大興奮しちゃいましたよ」
「……あぁ、そういえば遊里ちゃんって可愛い女の子好きだもんね~」
「そうなんだよねー、やっぱり可愛い子見てると目の保養になるじゃない?」
別に変な意味ではなくて、可愛い女の子は好きなのだ。変な意味じゃなく。
「あの、すいません隣の席良いですか?」
ふいに横から声がかかる。横の空席に誰か座ろうとしにきたみたい。
「あ~、この子みたいな感じかな?」
早苗が見上げた先には、黒髪美少女が立っていた。
「そうそう、こんな感……じ……って」
そこにいたのは、まさしく昨日会った四宮風音さんだった。
「四宮さん!?同じ学校だったんだ!」
「私もビックリしました。今日はたまたま食堂に来たんですけど、まさか遊里さんがいるなんて思ってなくて」
四宮さんが私の横の席に座る。トレイの上にはきつねうどんが乗っていた。たまたま食堂に来て出会うなんて、なかなかドラマチックな展開。運命的というやつだろうか。
「お~、きつねうどん仲間だね。遊里、この人がさっき言ってた人?」
「そうだよ、四宮さん」
「はじめまして、
なんと同い年だった。こんな可愛い子を見逃していたとは……一生の不覚!
しかしお嬢様という読みは当たってたらしい。多分四宮さんは内部進学のお嬢様組だろう。
「あ、同い年なんだね~、私達は1組だよ。私は伊藤早苗。早苗って呼んでね、風音さん」
「はい、よろしくお願いしますね早苗さん」
「うん、よろしくね~風音さん」
……あれ、ひょっとして私だけ四宮さんって呼んでるのか。さりげなく風音さんって呼んじゃお。うんそうしよう。
「1組っていうことは、特進クラスですか?凄いですねお二人とも」
うちの学校は1組と2組が特進クラスとなっていて、国公立を目指す子が多い。3組からは普通科で、系列の大学や専門学校に進む子が多いみたいだ。
「私は大したことないよ~、遊里はこう見えて結構勉強できるよ~」
「こう見えてってどう見えてよ。私も大したことないよ」
「いやいや、中間テスト学年4位だったでしょ、十分すごいから~」
「4位!すごいですね!私なんて……とても言える成績じゃありませんよ。勉強はしてるつもりなんですが……」
「うーん、何かやり方が悪いのかも?」
はっ、これはもしや仲良くなれるチャンスなのでは!
「風音さん、もしよかったら私と一緒に勉強する?そろそろ期末テストの勉強もしないといけないなと思ってるし」
「良いんですか!ぜひお願いします!」
「もちろん!じゃあ連絡先交換しよ!」
やった!連絡先ゲット!しかも一緒に勉強する約束も取り付けた!趣味が合ってしかも美少女の友達ができるなんて、昨日と今日の私はなんてツイてるんだろう!
「よかったね~遊里」
わざわざハンカチで目の端の涙を押さえるようなフリをしながら早苗がそう言ってきた。見た目は完全に孫に友達ができて喜んでいるお婆ちゃんだった。それでいいのか花の女子高生よ。
キーンコーンカーンコーン
しばらく授業のことや先生のことなんかの他愛もない話をしながらお昼ごはんを食べた後ダラダラしていると、予鈴のチャイムが鳴った。
「あ、予鈴だね~、そろそろ戻らないと」
「そうですね。では一ノ瀬さん、早苗さん、また連絡しますね」
「あっ、風音さん、ちょっと待って」
歩き出そうとした風音さんをつい呼び止めてしまった。
「えっと……良かったら遊里って呼んでね、って思って。いや、別にどっちでもいいと言えば良いんだけど気分の問題っていうかその」
「……はい、遊里さん、よろしくお願いしますね!」
にっこり笑う風音さん。昨日も見たはずのその笑顔は、なんだか昨日よりもさらに輝いて見えた気がした。
「いや~、なんか青春って感じがしていいね~」
「……早く教室戻るよ、早苗おばあちゃん」
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