想国のアルタレギオン
藤良群平
序章
プロローグ
何かが終わったとき、人は始まりを想う。
過ぎ去った過去を振り返れば、すべてはある一点から紡がれている。
あの日から。
ざっくりと切り裂かれた脇腹を押さえ、俺はその場に立ち尽くした。
あれほど流れていた血はもう止まっている。まるで、それが夢か幻であったかのように。
あの日の出会いが。
平凡で退屈な自分の日常を少しずつ浸食し、ついには永遠に消し去ってしまった。
後に残ったのは、焼けつくような痛みと、紅に染まったシャツ。
そして、傍らに立つ一人の少女。
何も言わず、俺を見つめている。
外見に似合わない殺気をまとって、冷ややかに俺を見つめている。
あの日と同じように。
もちろん俺は知らなかった。知る由もなかった。だって、そうだろう?
今日、この身に起きた出来事。
そして戦いと、不意に訪れた結末。
何が終わった?
戦いか。
いや、何も終わっていない。ただ、始まっただけだ。
何かが。
いつから?
拡散する思考は、いつしか一つの答えに辿り着く。
俺は、少女を見つめ返した。
少女は何も言わない。
ただ、まっすぐに俺の目を見つめている。
「これで、終わりか?」
俺は、少女に声を掛けた。
少女は何も言わず、首を横に振る。
まだ、始まったばかり。
そう言いたげな口元は、結局開かれなかった。
その代わりに少女の硬い表情はふっと和らぎ、一瞬笑顔を見せた、ような気がした。
あの日が重なる。
そして俺は気づいた。これが始まりではないと。
そう。
少女の名を知ったあの日から。
この物語は始まったのだ。
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