屠殺場
牧場の管理端末の対話ソフトが起動した。
牧場内を走りまわっていた、ナンバー09775―876―RRYT980
『戻っておいで…今日は大事な大事な日なのだから…』
1時間後、牧場内に併設されている完全自動化の屠殺場には《桃桜》を含め《桃桜》と同じ遺伝子を持つ兄弟牛達、200体が列を成して、その 時 を待っていた。
《桃桜》達の列は、ミスト状に加工された暖かな洗浄水を浴びながら数ブロックをゆっくりと自分たちの足で歩いてゆく。
やがて牛たちは完全無菌状態のフロアへとたどり着いた。
わずかに血のニオイのする空気を吸いながら、絶命までの道のり。
私は列の一つ前に並ぶ仲の良い《清風》とおしゃべりしながら歩く…
一つ前を歩く《清風》の巨体がラックに載せられ宙に浮く。
すぐにロボットアームが延びてきて健康体の重い体重の《清風》を逆さにつるす。
額に何かが打ちつけられ脳が揺れると同時に特殊な霧状の麻酔が鼻腔に注入され眠らされ肉体が気を失う。
いよいよ、私の番がきた。覚悟と言うほどのものではないが、今、私が使用している肉体の悲鳴を感じた。
肉体が泣いているのかな。なぜだか両眼から本能の涙があふれ出している。
当然の事だ。この世に生を受け、まだ20ヶ月なのだから…
若すぎる…
ロボットアームに吊るされながら、眠る《桃桜》がゆっくりと揺れながら移動している。
次の工程の細いアームが何本もすばやく忍び寄り首にナイフが入る。
数ブロックを通過した頃には、《桃桜》の体はきれいに解体されて牛肉と言う製品へ変わる。
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ーーーーー 私は死んだのだ ーーーーー
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