ボクの彼女はバ~サ~カ~

髙橋 二樹

出会い

第1話 能力

ドクン!!!!


「ヤット・・・ミツケタ・・・」


この世界は願えば特殊能力も魔法もなんでも習得出来るステキな世界。

ただし代償としてなにかが奪われる。

五感・・・もしくは体の一部・・・

対価に見合わない命までも・・・

そんな世界・・・



~始まりの洞窟~


薄暗く、べったりと湿気が体にまとわりつく洞窟内。

一人の少年が今にも泣きだしそうな顔で逃げ回っていた。


「はぁはぁ。ヤバい!ヤバい!今度こそ死ぬ~~~。」


ボクの名前はハツキ。

トレジャーハンターをやってる15歳!男です。

洞窟で絶賛死に掛け中!!!


能力を使えばなんとかなるだろうけど・・

しかしながら!臆病なボクはまだなにも願っていない。

怖くて何も願えない。


もし視覚・聴覚を持っていかれたらトレジャーハンター出来なくなっちゃう・・・

聞いた話では腕や足を持っていかれた人もいるんだってさ。

対等の物々交換ではないらしい・・・

神様のきまぐれってやつなのかな?


神様がいるのならこの状況をなんとかしてほしいものだ。


今の状況を説明すると


「ゴブリン3匹、スケルトン5体、なんか大きいブタ顔の鬼1匹」


「うん・・・たぶん死んだ。。。」


カチっ!!!


ん??イヤな音がしたな。


ガシャーン!!!


お約束と言わんばかりに・・・


大きな音と共に頭上からなにかが落ちてきた。

無機質に鈍く光る大きな檻。


「ま、まさかここでトラップ!?」


周りにモンスター、そしてトラップに引っかかりなにも出来ない状況。


「完全に詰んだ・・・オワタ」


しかし少年は意外に冷静だったのかも知れない。


ここならモンスターに襲われない。

モンスターが諦めてどこかに行くのを待つ?

目の前に《エサ》がいるのにどこかに行くか?


食料もたいして持ってない。

襲われないけど餓死END。


例え脱出しても襲われる。

もしかしたら食べられてしまうだろう。

DEAD END!


「どっちみち死ぬんだ。それだったら願いとやらをしてみよう。」


小さな少年は冷静に・・・

臆病な少年は静かに・・・

一点を見つめ・・・


死んだらなにも残らない。


「なにを願えばいい?この状況を打破するにはなにを願えばいい??」


人生でこんなに悩んだ事がなかったな。

口元に笑みを浮かべながら


よし!これだ!



「この状況を打破できるチカラをボクにください!!!」



少年は目を瞑り、お祈りするように指と指を絡め

願った。

ただただ願った。


ハツキの周りに不思議な青白い魔方陣が浮かび上がる。


「うわぁ~~~!キレイ~」


なにも考えず、言葉が出てしまった。


今はそんな事、考えてる場合じゃないと小さく首を振った。


次の瞬間、目を開けてられない程の赤く眩い光に包まれた。




・・・《スキル習得》    『 罠・強奪トラップ・スティール


・・・ 習得者:ハツキ ・・・


・・・ 現在の習得者 1名・・・


・・・代償は支払われました・・・



頭の中で優しく、懐かしくもある声が聞こえた。


「なにいまの?」


習得???

トラップ・スティール???

習得者1名???

今はボクだけの能力???

体は???

代償は???


ハツキは自分の体を確かめた。


「うん!手も見える。足も見える。」


自分の声も聞こえる。


ツンと鼻につく、モンスターがいる独特の獣臭・死臭と洞窟内のカビのにおい。


視覚・嗅覚・聴覚・視覚・腕も足もある。


味覚は。。。

まだそれはいいか。と小さな声でハツキは呟く。


「さてと。。。この状況を打破してもらいますか♪」


ハツキは胸を躍らせ


プレゼントを目の前にした子供のように


目を輝かせ、叫んだ!!!



「ト・ラ・ッ・プ・ス・ティ~~~ル!!!!」



意味もなくポーズを決め

覚えたばかりの能力を口に出した。


はたから見たらドン引きするような格好。

ハツキが自分の中ではダントツにカッコいいと思うポーズ。

ただし自分の中ではな!!!


ハツキがまばゆい光に包まれた。


目に見える景色がモノクロになる。

ハツキだけに見える世界。

ハツキだけの世界。


周りに座標が表示され落ちてきた

檻が宙に浮いて光っていた。


「おぉぉぉぉ!!!すっげ~~♪」


ハツキは理解した。

トラップなら自分の好きな場所に”移動できる”と


ちょうどモンスターも固まっており

そこに落とせば一網打尽だなと笑う。


「X軸12・Y軸45・中心」


・・・ 発動確認 YES・NO ・・・


頭に響く声


もちろん!イエs・・・??


「ダイジョブだよな?ズレてないよな??」


ハツキは急に不安になった。

詰めが甘いと良く言われる。

すぐに調子に乗って失敗することなんてよくある。

ありすぎるくらいだ。


「どうしよう?」


そんな不安を払拭する。

視点が変わる。


上から見下ろした世界。

方眼用紙の様な地面のモノクロな世界。


「なんか~このスキル当たりじゃね?トレジャーハンターっぽくね?」


暢気に感想を呟く。


罠にかかったら移し替えが出来る。

宝箱だって通路の設置罠だって怖くない。


目の前が急に点滅する。

モノクロとカラーの視界。


・・・ 残り時間120秒 ・・・


「えっ!?時間制限がある...だ...と」


ハツキは焦りつつ、しかし冷静に目標を見定めた。

やはり少しずれてたか。

危ない危ない。

溜息をついた。


「目標修正。X軸15・Y軸43・中心」


・・・発動確認 YES・NO・・・


今度こそ!

自信を持って。

確信を持って。


「イエ~~~~ス!!!」

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