晦まし峠 2/3
ごにょごにょと話し合った結果、小さい方が警戒心全開のまま話し始めた。
それから、そのままトラックの底に張り付いたりなんかしてこの峠にやって来て、隠れ場所を探していたらこのよく分からん施設跡を見つけて隠れていた。
で、腹が減ったからここに来た誰かの食い物をパクろう、と待ち構えていた所に私が来て、荷物を
やっぱり巻き込まれたか……。もう芸の域じゃねえか。
移籍してからこっち、巻き込まれ芸がすっかり板についちまった事を内心で嘆きつつ、
「いやお前ら、無関係かつ私だから引っかかったようなもんでな、他の私みたいなのには効かねえぞ」
「えっ」
「ついでに、大概は裏の人間に人質作戦は効かねえし、連絡が途絶えたらここに居ますと言ってる様なもんだぞ」
「……」
ガキ共に自分達が墓穴を掘りかけた事を説明してやった。
実際、なんか怪しげなデカいバンを峠に着くまでに何台も見つけたし、なんなら銃向けられて検問されたりしたし、もうだいたいの当たりは付けられているんだろう。
「ど、どうすれば……」
大の方が堪えきれなくなって泣き始め、中の方も釣られて泣き、小の方は
ちなみにそれぞれの『体質』だが、大のが基本の筋力強化、中のが私を眠らせたガスを吐く、小のがかなり夜目が利くんだそうだ。
「とりあえず、私の単車を崖下に捨てたとかねえよな?」
「私が茂みに隠しましたぁ……」
「積んでたもんとか構ってねえな?」
「ピストルはビックリして近くに投げちゃったけど……」
「その様子誰にも見られてねえよな?」
「見たけどいなかった」
「おうそうか」
「で。ど、どうするんですかぁ……?」
「あん? そんなもんここに籠城するしかねえだろ」
「関係ないのに……?」
「もう私と関係あんだよ。余所サマから見ればな」
「まあ、そうだな……」
ここでしれっと帰ろうとしても、多分何らかの関係を疑われてとっ捕まり、どっちかの拷問に掛けられてひでえ目に遭うのは確定だろうしな。
「とりあえず得物取りに行くから、心配なら監視つけろ」
「じゃあ、わたしが……」
「そりゃ正解だ。逃げようとしたら首でも締めろ。接近戦じゃ私は役立たずだからな」
私は立候補した大の方を連れて建物から出ると、そこは森になっている山を掘って造った地下施設だった。
ピークを下っていくと、途中から幅50メートルぐらい山火事かなんかで原っぱになっていて、そこから峠の休憩場所まで何メートルかがまた森という感じだった。
その山のてっぺんが下からは見えない監視台になっていて、小さい方が言うには原っぱの様子がよく見えたらしい。
狙撃銃を担いでゲリラ戦する必要がないのはありがてえ限りだ。
ガキ共が言った通り、得物も単車もそこにはあって、私は一応装備品を確認するとギターケースを担ぎ、単車を押して施設まで戻った。
1階でどっか単車を隠す所を探して良い感じの板をめくると、明らかに最近埋めた跡のあるコンクリートの壁があった。
なんだこりゃ。ガキ共がやったわけじゃねえだろうし……。まあいいか。
ちいと気にはなったが、
「おい、ガキ共。バリケードは……、できたな」
隠し終わった所で出入口に行ってみると、3人が近くにあったレンガやら棚やらなんやらでそこを指示通り塞いでいた。
「で、中くらいの。その監視台はどの辺にあるんだ?」
「一番上……」
「おうサンキュー」
置いてあったギターケースを背負って訊くと、中くらいのが右側にある階段を指さして返してきた。
そこを4階分ほど昇って行くと、四角い小部屋になっていて四方向がのぞける斜め上向きの開口部があった。
姿勢を低くして、棒きれで
肝心の下の方の視界は暗すぎて流石に見えなかったから、ゴーグル型のメガネを外すと、ケースに入っている暗視ゴーグルを付けてもう一度見る。
すると、どうもこの頂点をぐるっと囲む様に火が回ったらしく、ちょうど城跡の堀みたいに原っぱが出来ていた。
さて、何時間持つやら。
たぶん電波を出す物はバレるから使えねえが、宗司が勘づいてくれてるだろうし、応援が来るまで持ちこたえられれば良いだろう。
……あんまり考えたくはねえが、私がマワされている間にガキは逃がせるだろう。
「おれ達は何をすればいいんだ」
とか嫌な事を考えながら、一端引っ込んで銃を準備していると、小さいのが相変わらず警戒心ダダ漏れな顔でそう訊いてきた。
「とりあえずこれで見張ってろ。私が死んだらお前らは終わりだからな」
私はそう言って、予備の暗視スコープ2つを大きいのと中くらいのに渡し、そう指示して道路のある方にスタンバイする。
「……なんでそんなことやらせるんだよ」
「私も死にたくねえし、お前らに死なれちゃ寝覚めが悪いからだよ。文句言わずに守られろ」
私が逃げろと言ったらお前らは私を置いて逃げろ、と振り返らずに指示した私は、それに、分かった、と言ったガキ共の追手が来るのを伏せて待ち構える。
そうしていたのは少しの間だけで、ゾロゾロといかにも特殊部隊、といった様子の雑兵がワラワラと森の中から出てきた。
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