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「おとーしゃん」

「ん?」

「すいぞくかんたのしいね!」

 妻が友達と日帰り旅行に行くからと、息子とどこかへ遊びに行って来てと言われて一番に思い浮かんだのが水族館だった。無意識に自分の思い出と重ねたのかもしれない。

 父親と一緒に行くところが水族館だと、頭の中で位置づけされているのかもしれない。

「ほーら、こうするともっとよく見えるそー!」

「きゃはははは!」

 軽い軽い身体を抱きかかえて肩に乗せる。頭上からは「おぉぉ!」とか「わぁー!」とか「きゃぁー!」とか何を言っているかは分からないけど、喜んでいることは良く分かった。

 これから先、俺は息子と離れるつもりはない。もちろんある程度歳を取ったら子供離れをするつもりだけど、息子が子供の間は傍に居たい。父親として、息子を支えていきたい。

 自分の父親が支えてくれなかったからじゃない。父親もちゃんと俺を支えてくれていた。少ししか俺が汲み取れなかったとしても。

 子供を嫌いな親はいないという。きっと父親は父親なりに俺を愛してくれていた。だから俺も、息子を愛することにした。

 どこにいるか分からない父親に一目だけでも息子を見てもらいたいなんて、ふと思う。きっと無理だけど、もし見てらえたらあのくしゃりとした顔で笑うのだろう。


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