第311話 まさかの舐めた

 指先の荒れが酷く、ささくれが痛む。

 深夜の棚卸バイト、および、工場での手袋が、どうも合わないようだ。

 ハンドクリームが苦手で、よほど酷くならないと使わないのだが…

 致し方ない。

 寝る前だけメンソレータムを塗ることにした。

 塗るとすぐに、チョビさんが鼻を鳴らす。

「あぁ…きっと嫌なんだろうな~」

 フンフン鼻を鳴らしながら、僕の指先を嗅いでいる。

「意外に離れないな…」

 ペロッ…

「えっ? 舐めた?」

 ペロ…ペロ…

 まさかのチョビさん、メンソレータムがお気に入り?

「ほっとくと、ずっと舐めていそうだ…」

 そもそも身体にいいのか? 少量を舐めても害はないだろうけど…良くもない気がする。

「チョビさん…そのくらいで…」

『ニート…スカスカする』


 その後、しばらく口をチャッ…チャッ…と鳴らしながら、毛づくろいするチョビさん。

 まぁ…元気ならいいんだけど…

 変な物、気にいられても困るな~。

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