第304話 クロさん桜の木が好き

 晴れた昼、温かい冬の午後、クロさんが外に行きたがるので、庭に出した。

 桜の木に身体を擦りつけてアクビしている。

 クロさんは遠くに行かないので、

 ちょっと目を放したら、庭でクロさんが鳴いている。

『ニートー、ちょっと来てー』

『ニートー、早く来てー』


 珍しく必死に鳴いているので様子を見に行くと…

「クロさん…」

『ニート…降りれそうにないのだが…』


 中途半端な位置でしがみつくように桜の木に爪を立てている。

 微妙に身体がよじれているあたり、自分でも何とかしようと努力はしたようだ。


 手を伸ばしてクロさんを引き剥がそうとするが、本人が爪を引っ込めない。

「クロさん、とりあえず、爪を…」

『ニート…落ちる…』


 結局、僕の胸にボスンッと落ちて、サササッと部屋へ戻って行った。

「クロさん…痛い…」

 そこそこの衝撃だった…

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